難題を避けようとすると余計に追われる

マンション管理会社のフロントマンは離職率が高いと言われていることは以前に書いた。どういう理由かは察しがつくが、激務が報われにくいのが、最大の理由ではないだろうか。

お客様に誠心誠意尽くしなさいと言われても、なかなかお客様と意志の疎通が図れずに、誤解が生じてしまうこともある。

一度、お客様から不信感を抱かれ、下心を見抜かれてしまうと、そこから元に戻すのは至難の業だ。不信を抱いた側が、完全に思い過ごしであることを認識し、名誉挽回となるまでにはものすごいエネルギーが必要だ。

悪田権三が引継ぎを受けた物件のうち、何故、このマンションが悪田に回ってきたのか、分かりやすい物件がいくつかある。

前任者の配置換えである場合は致し方ないが、まったく意味不明なのもあって「なぜだろうか」と考え、暫くすると、その真意が理解出来たりもする。

悪田権三が、あるベテランフロントマンから引継いだ某物件は、声の大きな居住者さんが、特に前任者を嫌っていた。

理由は多々あったそうだが、だいたいが厄介な案件を避けようとして、腰が引けてしまい、挙げ句にギアをバックに入れて退散しようとした結果、余計、ぬかるみにハマって泥まみれになってしまったパターンである。

人は相手が自分を避けようとしている姿を敏感に察する。避けようとしている姿を知ると「余計に懲らしめてやろうか」という意識が芽生えたりもする。

懲らしめてやろうかという意識が根深いと、徹底的にやってやろうかとの考えに至ることがあり、ここまで来ると、もはや関係修復は困難だ。

今日、悪田は、たまたま用事があって、そのマンションに行くと、たまたま前任者が苦手とする人がいた。顔は怖いが心は優しい。何よりも悪田と同じ「犬好き」だ。悪田が挨拶をすると、にこやかに労いの言葉をかけてくれる。

しかし、前任者がいると、全く正反対の態度を示す。以前によほど腹立たしいことがあったからしい。

確かにそういった雰囲気が読み取れる。総会の場にわざわざ足を運び、じっと黙っていたかと思うと、突然、堰を切ったかのように、前任者に対する怒りを爆発させる。聞いているこちらがヒヤヒヤしたものだ。

しかも、こちらに非があるならば、ちゃんと謝罪して再発防止を図れば良いものを、前任者は、自分の落ち度はさておき、客の職業やうわべの役職といった、いわゆる「属性」ばかりを見て、人を評価し、それを堂々と口にする。「あいつは何屋だから」とか「〇〇を生業にしているのにロクなヤツがいねぇ」とか抜かす。

悪田は職業で人を判断するのは、ものすごく嫌いだ。悪田も警察に長くいたから、拝命し即座に、いわゆる「洗脳教育」を叩き込まれたが、職業に貴賤があるという教育だけは受けなかった。困っている人を救うのが警察の仕事であり、困っている人であれば、相手の思想・信条・宗教・門地・性別などは関係なかった。

朝鮮総連は「主体思想(チュチェ思想)」を根幹とする、MM主義に基づく反日団体で、北朝鮮だから当然なのだが、警察には一切、協力しない。しかし、朝鮮学校の女子生徒が痴漢の被害に遭うと、連絡だけはしてくる。それは、先方にも事情があるだろう。警察にも、本来は警察なりの事情があるのだが、鉄道警察隊に在籍当時、悪田は部下を警乗に行かせたことかある。

残念ながら、闇のベールに包まれた組織であるため、被害者に寄り添った対応をすることは出来なかったが、痴漢被害で困っている女性がいれば、日本人も朝鮮人も関係ない。それが警察のスタンスだ。

その点、悪田の前任者は、分りやすいくらいのアホだ。客が外国人だと知ると、分りやすく態度を変えてくれるようだ。

実は、現在、継続中の、ある共用部火災保険適用案件がある。

ある外国人家族が共用部からの賠償保険対応案件の被害申告をしているのだが、対処方法にご不満があるようだ。

肝心の悪田の前任者は、これを放置したまま、別のアフターサービススタッフに丸投げして、自分は姿をくらましたようで、そうしている間に、外国人家族はここでの生活が嫌になり、転居してしまったとのこと。

後日、アフターサービス担当者の努力により、不具合原因が解明され、改修工事が行われた。修理代は保険対応となったが、申告してきた外国人客にとって、管理会社、特に悪田の前任者に対する不満は根深いようだ。

今日になって、損害賠償請求とかかれた郵便物が会社に送りつけられてきて、そこに、前任者に対する不満の数々が述べられている。

驚いたことに、そこには前任者が散々、厄介な案件から逃げ出そうとしていたやり取りが赤裸々に書かれているから、客は良く見ているものだと感心させられる。

この書類が送られてきたことを、悪田は親切心で前任者に教えてやった。しかし、前任者は、まるで自分のことと介していないようで、既に、ギアをバックに入れる術もないようだ。

そればかりか、まるで他人事のように、上長に報告しておけと悪田に指示をしたから、悪田は前任者に「済」とメッセージ送り、後は放置した。

今後、何かを押し付けてきたら、これまでの失態の数々、お住まいの居住者の怒りの数々を社内で明らかにしてやろうと考えている。

どんなに能書きをこいても、いや「能書き」をこくヤツほど使えないのは、世の流れ。お望みならば、自分自身の不作為が元でこのような結果をもたらしたことを、増幅器を用いて拡散してもいいと考えている。

いっぽう、それはそうとして、悪田は前任者以上に努力を重ね、このマンションの住民のために働くまでのことだ。

今後とも悪田は、逃げずに、案件に先回りしてお客様のためになることを考えていこうと誓いを立てた。

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