・悪田は、警察人生31年間のうち、刑事の仕事を多くやらせていただく機会に恵まれたことは、これまでにお伝えしたとおり。退職した今は、静かに余生を送る単なる一般市民となっている。
・マンション管理士の世界は、第二の人生の拠りどころとして、ご自分のペースでお仕事を進めておられる諸先輩方が多い。いわゆる「士業」という部類であっても、実は、それを専業としている方は少なく、だいたいの方が本業を他にお持ちで兼業されている。
・別な言い方をすると「マンション管理士」だけで食べて行くのは、けっこうしんどい。
・ところが、その仕事の間口はかなり広い。僅かながらもマンション管理会社の経験を有する悪田でさえ、管理の経験があるから、専業で食べて行けるかと聞かれると、はっきりと「無理だ」と感じている。
・マンションという集合住宅に、しっかりとした管理会社がついていて、安心できるフロントマンが組合と管理会社との良好な関係性を構築してくれるのであれば、そもそも、マンション管理士など必要ないと悪田は考えている。ところが、実際にはそうでないことが多くあるから、組合さんから意見を求められ、公共アドバイザーとしてお役に立てる場面が出て来る。顧問でお役に立てる場面は、実はそうそうない。
・一方、管理会社としても、利益が希薄で手間のかかるマンションとは手を切り、利益率の高いマンションと委託契約して、収益を上げ、会社を成長させたいというのが人情だと思われる。
・だからこそ逆に、悪田はそこに「大きなビジネスチャンスがある」と考えている。実務経験を活かし、困っている組合に寄り添い、一緒に汗をかき、時に先頭に立って戦い、勝利して、その栄冠を勝ち取れば、幸せは組合員さん全員にもたらされると悪田は信じている。
ここまでが導入である。
・さて、今回は、導入に次ぐ展開の入口をワープし、いきなり佳境に突入することとする。
・某日、お客さんからの依頼を受け、ある工事で施工不良をやらかした相手方業者に対し、民事調停の申立てを行うこととなった。既に調停成立した案件であり、悪田にとって都合の良いことに、調停条項の中に、いわゆる「保秘徹底:他言無用」が入っていない。
・だから、本音としては、さんざん舐められて悔しい思いをした組合員さんの恨みを代弁し、特に杜撰な工事を平気でやってきた相手側業者やその代理弁護人の暴言の数々、標記の調停委員の言などなど、この場で白日の下に晒してやりたいと思うことは山ほどある。
・が、そこは、お客様あっての商売をさせていただいている立場もあり、無事、調停成立となった案件なので、軽くマスキングしてお伝えする。何といっても、今回の調停成立は、組合員さんと手を携えて乗り切ってきたチームプレーの賜物であるから、あえて飲み込むところはグッと堪える。
・本当は、標記の言に続いて調停委員から悪田が「あんた、弁護士じやないんだろ。これ以上言うと、非弁行為で、ここからつまみ出すぞ。俺は弁護士だぞ」と怒鳴りつけられたのが事実だ。
・紛れもないパワーハラスメントだと思う。しかし、神奈川県警での長年の経験で、多くの先輩・上司から可愛がりを受けてきたうえでの叱咤激励に比べれば屁みたいなもの。そういう逆境に遭遇すると、悪田は逆に燃えてくる。
・そもそも、調停の席に同伴できる資格があるのは、冒頭のように弁護士や特別な資格を与えられた司法書士だけらしいので、マンション管理士ごときの同道が許されることはない。そこで、ぐずぐずと弁護士資格もない悪田が能書きをこねたことに、調停委員は、イライラが爆発し一喝したという構図だ。
・そこの部分のみを切り取れば、裁判所の温情で調停に加えていただきありがとうございましたと言うべきだったかも知れない。しかし、そこに悪田の経験が邪魔をした。「は?弁護士?だから何なの?世間知らずの調停委員め。本当に困ってこういう手続きに出るしかなかった経緯も理解せず、虫の居所が悪いのかも知れないけど怒りに任せて軽口叩いてんじゃねぇよ」と言い放ってやりたかった。本音は・・・
・しかし、組合員さんの立場を考慮し、調停とはいえ、裁判所の手続きに当事者の付き添い役として認めていただいたことに、ただただ感謝しつつ、腹正しい思いを「ぐっ」と「ごくん」と飲み込んだ。
・調停の相手方は海千山千の弁護士をつけてきた。調停委員は二名で、後で分かったことだが、一人(悪田をうなり飛ばしたのは弁護士であることが分かった:次回調停からは弁護士バッヂをつけてきた。バッヂがないと悪田のような不心得者に舐められて仕事が出来ないんだろうね、この方はと感じた)で、もう一人は建築士といった豪華な布陣だった。
・悪田は負けなかった。むしろ勝った。悪田を頭ごなしにうなり飛ばした調停委員も、本音は自身が未熟で、弁士としての能力が劣っているから、このまま劣勢に立たされてはなすすべがない。だから、伝家の宝刀を抜いたまでだ。悪田に言わせれば、所詮、その程度のこと。
・さて、窮地に立たされた悪田は、この後、どうなる?
・調停は無事に成立した。が、その展開はまた後日お知らせする。是非、ご期待くだされ。