・本音を言えば忙しい。100歩譲っても忙しい。常に繁忙期のようだ。週末の土日に、重たい議案をいくつか抱えた組合の集会が入っている。事前にある程度の覚悟を決めている。カレンダーを見ながら「たぶんこのあたりは帰れないんだろうなぁ」と考えていると、そのとおりになる。泊まり込みで仕事をやったところで、人間、一人の力でできることはたかが知れている。
・どんな仕事であれ、仕事は「できる者に集まってくる」それは間違いない。できる人は、真面目にコツコツと取組むし、不平不満を抱えていても、常に自分でコントロール出来る術を持っている。周囲に対してもそういう空気感を漂わせる。
・癒しの存在として頼り甲斐があるから、なくてはならないムードメーカーともなる。この良い連鎖が周囲に伝播すると、忙しさが業績に繋がっていく。業績が会社の利益となり、ゆくゆくは、それが自分自身の給与に反映される。それが満足感となる。「たいへんだったけど頑張った甲斐があった」と思える納得感に繋がる。
・悪田権三が、たかだが約1年5カ月のマンション管理経験を通じて、経験から学んだことはたくさんある。たくさんあるから、ネタが尽きない。それを多くの人に知ってもらいたくて、このブログを書いている。
・その実務を通じて、自分自身を鍛錬すれば、凄い成長に繋がると思えるツボを二つ見つけたので紹介する。
・一つ目は「事案・事態対処能力(件数)向上させる能力」である。悪田は、正直、暗記は苦手だ。警察教養の中でも、初級編である初任科(県警察学校)に始まり、巡査部長・警部補任官時の巡査部長任用科・警部補任用科(管区学校)、警部任用時の警部任用科(警察大学校)まで、いわゆる「基本過程」と呼ばれる教養は数多く接する機会があった。が、自慢出来るほどの好成績で卒業出来た試しがない。
・暗記力が弱いからだ。特に、初任科や管区学校での基本過程は、ほぼ「暗記大会」だ。実践をそこに取り入れようとしても、警部補以下の警察官は、実働部隊である。実働の警察官に必要な知識の根幹は「基本」である。基本は「叩き込まれること」で身につく。「バカの一つ覚え」のように復唱して繰り返すことで少しずつ脳に刷り込まれていく。
・人間、年齢を重ねてくれば、新しい知識は入りづらくなるし、記憶力も低下する。それは紛れもない事実だ。しかし、常に追いまくられ、お客様から試練を与えられるていると、自分自身が気を張ってないと、つい失念してしまった結果が、取り返しのつかないことになりかねない。失敗は、当然、自分に降りかかる。
・それを避けようとすると、優先順位を考える。例えばAの仕事をやっているとする。締め切りがあるから急いでいる。その時に管理員からBを仰せつかる。Bの対処は急ぎではないが、お客様からの依頼事項だとする。失念すると厄介だから、後で必ずやらなきゃならないと認識し、ノートに記す。またAの業務に戻ると、電話が鳴り、お客様からⅭをやって欲しいという相談を受ける。お客様は自分の担当するマンションの組合員さん。当然に「承知致しました」と返答し、忘れないようノートにメモしておく。そうこうしている間に、取引先に依頼した見積りがまだ出て来ないことに気づく。連絡をするが電話に出ない。忘れないようショートメッセージを入れておく。こういうことを繰り返しているうちに、元々、自分が何をやっていたのか。今日、取り急ぎ何をしなければならないのか分からなくなってしまう。結局、一日中、雑用に振り回されて、何も進展しないということは日常茶飯事だ。
・しかし、日々、これを繰り返していると、いつの間にか、記憶力が鍛えられている。仕事の段取りが容易になる。誰もその代役はいないと諦めると、結局は、自分がやるしかないから、自分が、今、なすべきことを考え、そこに集中し、次を考え、まとめて一気に片付けられる案件と、集中的に取組まなくもにければならない案件との仕分けが容易になる。
・そうしている間に、対処出来る能力(件数)が向上し、少しずつ自分自身のレベルが向上したことを実感出来るようになる。
・次に感じるのは、自分と他人の感情のコントロールが出来るようになることだ。どこの県警にも部署に違いはあれど「職質指導班」という、地域警察官の職務質問による検挙能力に長けた凄腕集団がいる。彼らは、やみくもに職質をしているのではない。過去の苦い失敗を数多く経験し、そこで事例に学び、次に生かそうと努力を重ねる。数多くの現場をこなしてくると、失敗事例に近づく動きを敏感に察知出来るようになる。そうなると、過去の経験から、いわゆる「負け勝負」に近づくことが読み取れるので、無茶をしないで仕切り直しせねばならない勘が鍛えられるようになる。
・悪田に言わせれば「ケンカと職質と取調べは機先を制した者の勝ち」だ。いかに多くの現場を踏み、失敗を重ね、それを次に繋げるかで、将来の成功に繋がってくる。
・お客様は集会の席で終始、黙っている人もいる。何を質問して良いか分からないこともあるのかも知れない。あるいは、周囲を気遣かい、あえて黙っている人もいる。反対もある。自己の存在感を大いにアピールする人もいる。コミュニケーションが取りづらいお客様は数多くいるものだが、サービス業だから、こちらから近付いていく姿勢が肝心だ。
・フロントマンは、理事役員さんから、強く言われてしまうこともある。こちらに落ち度がないのに怒鳴りつけられることも。こちらに落ち度があって叱られることなど日常茶飯事だ。謝罪して済むこともあるし済まないこともある。「上司を出せ」と言われることもある。そのオーダーに向きあってくれない上司もいる。
・理不尽など、それこそ数え上げればきりがない。しかし、常に、こちら側から、信頼関係を構築しようと努力する姿勢を示して行けば、意外と難解ではなかったりもする。
・どちらかというと、悪田はおへその曲がった異端児とは気が合うし、気心を通じてコミュニケーションを図る仕事には向いていると感じる。気心の知れたお客様との信頼関係が深まれば、自然と会話の中で、押しどころ引きどころが分かるようになってくる。
・これが高じて、お詫びの場面では「私に免じて許して下さい」と言えるようになり、反対に、文句を言いたい場面では「今回はあなたに免じて」と言えば丸く収まる。自分に免じてと言われた相手方は、宥恕の情が、処分結果に反映されたと理解し、恩義を感じてくれるようになる。
・自分が悪い時は、ただひたすら謝る。「申し訳ありません」をとにかく繰り返せば、いつしか相手が諦める。「お前は申し訳ないしか言えないのか」と言われたら「気の利いたお詫びの言葉が思い当たらないんです」と返すようにしている。こちらが引き下がって収束させるべき場面での美辞麗句はかえって反発を招く。それに相手が納得してくれるかどうかは向き合い方次第で、実は答えはない。
・ただ、人間社会は、義理と人情、それに浪花節で構成されていることは間違いないと感じている。