悪田権三は、弊社「心の通う管理」の社長からこのように宣告された。指を詰めて謝罪すると伝えたが拒絶された。
正直、目の前が真っ暗になった。これからもこの理不尽や不条理を受け続けることは、まさに懲役という表現にぴったりだったからだ。
仮に判決を言い渡す場面で、裁判官が半ケツを出していたら、多少は笑いもこみ上げてくるだろうが、心の通う社長は尻を出してはいなかった。
今の若い人はあまり着なくなった、重厚感のあるダブルのスーツをビシッと身につけていた。
ともあれ、そもそも、悪田は懲役刑を受けなければならない刑罰に振れる犯罪を犯してはいない。
むしろこれまでの前任担当者達が背を向け、耳を塞ぎ避けてきためんどくさい案件を正面から受け止め、真面目に熱心に対応してきただけだ。
また、顧客に対し「やってらんねぇから辞める」のメッセージを送ったことに関しても、前記のような流れの中で、ワガママ放題を求める方が無茶な要求をしている。
これは最近で言われるところの、いわゆる「カスハラ」と呼ばれるハラスメントのひとつの態様だと日本共産党の支持母体の労組が述べていたものと同じだ。
したがって、悪田は自分に非がない。だから、非がないことには謝罪しないことにした。
ワガママ放題の顧客にも、今後、仮に面会の機会があればそのように伝えるつもりだ。
社会人として、本来やらなければならない仕事にきちんと向き合い、与えられた仕事を適正に対応する。
余計な忖度や理不尽は拒否する。考えてみれば、悪田権三は単なる県警OBだ。
世間の警察OBの中でそんな生き方をしているのは悪田だけだとすれば、そこに何かしらの意義が見いだせるからと動機づけられるだろう。
だが、しかし、悪田にはそんなものはない。普通に健康的な生活が送れ、ボランティア活動で、悪田を必要とする人のお役に立てて肩に力が入らない環境の中でのんびりと余生が送れれば、それで十分だ。
人生は所詮、死ぬまでの暇つぶしだ。
とはいえ、理不尽に断固戦うほどの気力も体力もなくなってきたので、これからは「人生、日々修行だ」とほざきながらぬるま湯に浸かることに決めた。