・熟慮のうえ、最良の言い方だとの結論に達し、そうご挨拶した。
・以前に、悪田権三が「もうやってらんねぇ」とか「辞める」とか「指を詰めて謝罪する」とかの、一連の騒動に関して、本日、お客様にお会いしてお話をさせていただく機会をいただき、別れ際に述べさせていただいた言葉だ。
・悪田がお客様に送ったメールの内容は良くないという審議結果に至った。社長がそう判断してくれた。悪気があって作って送信したものだから、いわゆる「確信犯」というヤツで一番たちが悪い。警察なら間違いなく懲戒処分だ。会社を辞める気で作ったから、それを元に懲戒解雇してくれれば良かったが、何故かおとがめなしだ。「甘いぞ民間会社」
・だいたい、こういうものは「切れた者の負け」と昔から相場が決まっているから、そもそも非があるのはこちらだ。しかしながら、悪田に言わせれば、そういう形に誘導した張本人はお客様なのだから、原因を作った相手に謝罪をするという解決方法は釈然としない。
・だから、悪田は悪田の上司がどのような形で話を切り出すのか、興味深々であった。「こちらの落ち度でご迷惑をおかけした」と全面的に謝罪の姿勢で臨むのか、はたまた、失礼なメールを送ったことを謝罪しつつも、こちら側の姿勢を正しく評価してもらうよう誘導するのかを見届けようと考えた。
・悪田は昔気質の頑固者だから、ここで臍を曲げ、厄介なことを言い出すのではないかと、上司もさぞや気を揉んだのだと思う。だが、取り越し苦労であった。
・悪田の上司は年齢は若いがしっかり者だ。また、お客様も常識人で物事の道理をよく理解しておられる方である。たぶんいちばん幼稚でめんどくさい存在は悪田自身だということを、今日、改めて再認識させられた。
・上司とお客様とのやりとりにメモを取りつつ、これまでに管理会社の担当フロントマンとして議案をここまで誘導してきた立ち位置にあるものとしてお伝えすることは伝えさせていただいた。
・その中で、①出来ることはやる。②今後、具体的対処方法について前例がないものは、理事会で協議しつつ推進して行く。③推進して行くうえで不備が見つかれば、検討しながら改善を図る。④管理会社としての立ち位置をわきまえつつ、お客様からの信頼を得られるよう適正に業務を推進して行く。といったことを確認させていただいた。
・一方で、出来ないこととして、①区分所有法等の基本法で定められた強行規定を上回るような罰則を規約や細則を盛り込むことは出来ない。②区分所有者間において争いのある、あるいは意見の対立がある懸案事項を、根拠なくゴリ押しして適用することは出来ない。③物理的に不可能なことを感情に任せて行わせることは出来ない。ということを理解していただき、なるべく穏便に、なるべく被害を感じている人の目線に寄り添い、スピード感を持って公正に悪田が主導していくということの了承を得ることが出来た。
・当然である。それが管理会社、ひいてはフロントマンの矜持である。
・共同住宅の住人は、悪田も含め、生活様式も価値観も主義主張も支持政党も宗教も人種も怒りの沸点も融点も涙腺の緩さも体力も持久力も導火線の長さもアンテナの高さもすべて違うからおもしろい。
・腹立たしいこともある。悔しいこともある。不条理だ理不尽だを感じる時もある。
・だが、今日も健康でいきいきと働けていることは、そこにマンションかあるからだ。
・お客様との打ち合わせ後に、上司から「悪田さん凄いですね。たった一年半であそこまで根拠立ててきちんとお客様に説明して、納得を得られるなんて凄いですよ」とのお褒めをいただいた。
・「いえいえ、なんのなんの、すべて警察で経験させていただいたことの、ほんの一部分です」と言いかけてやめた。理由は、現場の警察官はもっともっと苦労しているからだ。