その人にしか分からないこともある

・悪田権三が担当している、マンションのお客様に、やや難易度の高いお悩みを抱えているお客様がおられる。

・内容は詳細出来ないが、子供さんとお母さまに障碍があり、それを家族で支えている。

・今までに、やり場がなく、その苦情が管理会社だけでなく、周囲の居住者さんに向けられることもあったが、最近、悪田とご主人様・奥様との関係が構築され、何か問題があるときには、悪田に、直接、電話をいただくようにしてくれている。

・実は悪田とは面識がないが、たぶん「この問題は容易く解決出来るもの」と直感した。理由は、悪田が元警察官だからだ。

・子供さんとお母さまには、障碍に関し、ある共通点がある。それは「健常者には聞こえない音を衝撃音と感じる」と「見ず知らずの人の声がどこからともなく聞こえる」ということだ。

・聞こえた音は、いずれも、何かしらの「自分に対するシグナルの証」と感じられるようで、心を乱す異音は、当事者にとっては迷惑このうえないもののようだ。

・家族に話しても理解してくれない。父親からは「お前がおかしい」と言われる。家で息子が暴れると輪をかけて父親が叱る。余計に息子が暴れる。母親はいたたまれず、余計にストレスを感じる。父親は仕事に忙しい、仕事中で対応出来ないこともある。

・マンションという共同住宅に住んでいると、人が家内で暴れると周囲に音が響く。周囲の住民さんも迷惑する。管理会社に苦情を言ってくる。しかし、根本的な解決方法はないから、それ以上の進展はなく、みんなストレスを感じる。

・ではどうするのか。

・悪田がガス抜き役になればいい。それだけのことだ。病気を根治することは出来ないが、悪田が担当者である限り、ずっと寄り添うことは可能だ。

・トラブル発生時に、直接、悪田に電話をいただければ、対応が出来る時には話を聞く。対応が出来ない時には折り返すと約束した。こうすることで、暴れたものの復旧は出来なくとも、二次被害・三次被害を防ぐことが出来る。

・それだけのことだが意義深いことだ。

・既に実践しているが、果たしてその対処方法が正しいか正しくないは分からない。いや、むしろそんなことはどうでもいい。大切なことは、①悪田が自信をもってアドバイスすること。②余計に火をつけないこと。③間違ったら自分の非を認めること。これだけで十分だと、悪田は確信した。

・さっそく、今日、何度か電話をいただいた。

・電話に出られない時もあった。だが、折り返しが出来る局面で電話を返し話した。

・会社に電話が入ってショートメッセージで内容を知らされる。折り返しする。伝達して電話を置いた後に、すぐ折り返しが来る。話を聞く。そんな繰り返しだった。

・実は、弊社「こころの通う管理」でも聞こえない筈の音が聞こえるという怪奇現象が起こっている。

・悪田が知った発端は、悪田が入社間もないころ、上司から聞いた「誰もいないのに通用口から人が入って来る」という現象だった。

・当時、毎晩、深夜まで働いていた上司は、夜中の0時を過ぎるとこの原因不明の音を感じてストレスになったそうだ。そして自席に「盛り塩」をし、それが暫く机上に置かれていた。

・実は悪田も仕事が詰まり、たまに、いわゆる「社伯」をする際に、当時、上司が言っていた、通用口から人が入って来る異音を感じていた。たまたまではなく、実は毎回だ。鉄扉が開いては閉まる音だ。だが、当然、そこに人はいない。

・最初は気になったが、最近では「またオバケが挨拶に来てくれたか」と思うようにしている。良い意味で考えれば、ロクな仮眠所もなく、硬い机上にふとんも敷かず寝ている社員を、素性の知らないオバケが激励してくれていると考えた方が、ありがたみを感じる。

・だから「ガチャ」っと扉が開き「ドン」と閉じる時に「いつも見に来てくれてありがとうね」と伝えている。そしてダラダラ寝ては、早朝に目覚めて「深夜早朝のコンビニ店長」の顔を見に行く。そして元気を取り戻す。それを繰り返している。

・今日は母親とこんなやりとりをした。

・母親「今、子供が暴れているんですけどどうしたら良いでしょう」

・悪田「水道の水をコップ一杯飲ませて下さい。飲み終えたら、大きく深呼吸させて下さい。それで治まります」

・母親「さっき、甘いお菓子を与えたのですが」

・悪田「要求がエスカレートするので、暴れている時は、水道の水以外のものを与えないで下さい」

【切断後、際入電】

・母親「今、女の人の声が聞こえるのですが」

・悪田「それは仕方ありませんが、今は、子供さんを落ち着かせることに専念して下さい。女の人は無視しましょう」

・対処方法としては間違いがあったかも知れないが、父親からは納得を得られた。というか、感謝された。

・悪田は警察で在勤中、何百体という死体を扱い、何十人・何百人というヤクザを含む市民からクレームをいただいてきた中で、オバケという存在に遭遇したことはない。

・それが、今ではオバケちゃんからラブコールをいただき、励みにもなっている。

・改めて「人は変化の中で生きている」と言いたい。正解か不正解かは別として、警察時代を含め、こういう機会を与えていただいたご縁に感謝している。

 

 

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