あるマンションの区分所有者さんが、管理会社を相手に50万円の損害賠償を請求するとの内容証明郵便を送りつけてきたことがあった。
根拠は、自室が漏水被害にあったにも関わらず適切な対応を取らず先延ばしにされ、そのために引っ越しを余儀なくされたというものだ。
適切な対応を取らなかった訳ではないから、そもそも管理会社が訴えられる筋合いのものではない。
マンション内での漏水原因調査は簡単なものから難易度の高いものまでいろいろあるが、ドバドバと水が溢れているものは原因が明白で分かりやすかったりする。
反対にジワジワ染みる、染みたり止まったりが厄介だ。ある原因でそうなる訳で、その条件が起こっても微量だから緻密に調査しなければ分かりづらい。
マンション総合などと言われる共用部火災保険は保険会社にもよるが、漏水原因調査費用は保険適用可能だが、原因箇所の復旧費用は出ない。また、階下に損害が及んだ場合、漏水原因が共用部の排水管であった場合、特約となる施設賠償保険での適用が可能となる。
上階の不注意で漏水を発生させ、階下のお部屋に損害を及ぼした場合は、これも特約となる個人賠償保険での適用対象となる。
すなわち、漏水被害にあった場合、被害者が加害者に請求出来る態様は、被害者から管理組合、あるいは被害者から加害者となる。
保険適用はその費用を保険会社が持ってくれるかどうかのことに過ぎない。
管理会社はむしろ関係ない。
だが、何故、被害者は管理会社を訴えるという行動に出たのか?
たぶんそれは、ダメ元でやるだけやったに過ぎない。それともう一つ意図がある。自分が、いわゆる「焼け太りした」という非難に晒されるのを回避するためだ。
そもそも管理会社の担当者は調査や復旧に時間を要したのは事実だが、それは関係箇所の区分所有者からの協力が得られなかったから。
単にそれだけのことだ。
しかし、この種の訴えが寄せられると、得てして組織は身内を査問にかけたがる。
対外的に堂々と、当方に落ち度がないと断言出来るかを判断するためには、まずは事実かどうかの検証が必要だ。この内容については以前に書いたので、詳細は割愛する。
被害者からの申告に基づき復旧工事が行われた。結果、ほぼフルリフォームに近い形になった。
実はこの件に関してもこちらの説明が足りず、理事役員に迷惑をかけてしまった。
「何故、被害者の申告どおりの復旧工事をしたのか」と問われたが、元々の状況が分かるのは家人だけだ。
だから、漏水被害によりこの部分がダメになった復旧して欲しいと言われてしまうと、それを否定するのは困難だ。
弊社に寄せられた催告書のような文面には、漏水被害に遭ったにも関わらず、管理会社が適切に対応しなかったという内容がつらつらと書かれている。
だが、しかし、ある時期において引っ越しを決めた時点において、これに乗じてフルリフォームする意図であったことは明白だった。
予期したとおり、引っ越しをしてカラになった部屋のリフォームは短期間で完成し、元々の状態は分からずとも、見違えるような室内に蘇った。
しかし、それでも不満を残しながら、やれ接着剤の臭いが酷く、これでは生活出来ない。とか、ここまで復旧が遅れたのは管理会社の怠慢だから、損害賠償を請求するとかの不満をつらつらと述べ続けた。
これもひとえに、自らが漏水被害で「焼け太り」したと周囲から思われないための偽装工作だ。
3日前に、管理員さんから悪田に電話があった。
「通用口に不動産会社の社名が書かれたキーボックスがぶら下がっているんですが、何だか分かりますか」はて、悪田には皆目、見当がつかない。
それで、悪田から不動産会社に問い合わせの電話を入れ、本日、回答があった。
依頼主は漏水被害者で、売却ではなく賃貸のための媒介を依頼したそうだ。
被害に遭ってもタダでは転ばない。外国人ご夫婦のたくましさを垣間見た。