あんた弁護士でもないくせに③

・悪田の協力会社に、当該某社の施工報告書を見てもらったところ「相見積とかではなく、これは瑕疵担保責任とか契約不適合責任とかの問題で、無償で再施工してもらうべきでは?」との意見をいただいた。

・悪田は、当初、意味が分からなかった。

・どういうことかと説明を受けると、施工上の瑕疵は大きく三点。①PS(パイプスペース)内のいわゆる「隠蔽配管(いんぺいはいかん)」内では耐火性のある部材を使用しなければならないのに、普通の塩ビ管が使われている(塩ビ管でも耐火性のあるものがある)。「アキレス」と呼ばれる横引管も、普通のビニール製の部材が使われている。ようするに、火災が起こった時に排水管が溶けてしまっては、話にならないからだ。②施工箇所にコンクリートガラが残置されている。清掃をしていない。ゴミを現場に捨てて帰ったことになる。③老朽した配管の施工箇所以外の場所からも、今後、同様な不具合が再発することも考慮すれば、当然に「点検口」を設けるべきなのに、ついていない(意匠の問題を含むが)。常識的に考えれば、経年マンションにて再び同様の不具合があるたびに、壁に穴を開けていたのではきりがない。

・2階~1階への漏水原因が、この施工不良によるものかどうかは分からないが、少なくとも、施工報告書の写真から瑕疵は明確だという。だからこそ、この施工不良を業者負担で再施工してもらい。1階からの漏水との因果関係を明らかにすべきとのアドバイスをいただいた。

やはり「餅は餅屋に焼かせろ」である。さすがは優れた排水管専門業者さん。その助言は大いに役に立った。施工箇所が漏水原因かどうかは関係なく、施工不良があるのは明白なのだから、そこを、そちらの費用負担で直せ。単にそれだけのことである。悪田はこの助言を、早速、理事会に報告し、今後の対応を検討してもらった。そのうえで、施工業者の担当者に上記三点の再施工を依頼するよう伝達して欲しいというオーダーを理事会から依頼された。本来、委託契約外の依頼事項だが、理事役員の大半が女性を占める理事会においては、この交渉を女性に任せるのは酷というものだ。

・早速、悪田は理事会からの同依頼に基づき、担当者に工事の不備を指摘した。冒頭のとおり、悪田は弁護士ではないので、あくまでも理事会からの依頼内容を担当者に伝達するということだけ。その後、かなり間が開き、担当者から、後日、管理者である理事長あてに一通の書面が送られてきた。

・そこに書かれていた内容には驚いた。書面には「塩ビ管を耐火性のある部材で被覆する」との提案が記載されており、耐火性のある配管を敷設し直すとの内容はどこにも書かれていなかった。上下階を貫通する「スラブ」の処理も書かれていない。これには、当代理事会の役員も、このマンションが業者に完全に舐められているとの認識が広がった。同時に「許せない」との感情が起き、その後の理事会で対応を協議した結果、施工会社に工事代金全額の返還を求めるべく、民事調停を起こすことで意見が一致した。民事調停で解決しないなら、訴訟も辞さないとの意見すら出た。

・かくして、調停を起こすべく、臨時総会を開催し、裁判所に申し立てを行う運びとなった。

・何度も繰り返すが、このブログは元三流刑事の体験談を、広く多くの皆様にご覧いただき、例えば「素朴な社会正義とはなんぞや?」とか「間抜けな刑事がミスを重ねて、結果、良い教訓となった」とか「こういうバカな元警察官も、退職後、多少は世の中のために貢献している」等々を知ってもらうためのものである。だからこそ、今更、恥をかくことに恐れはないし、経験が浅い分野にも果敢に取組んでこその自分だと考えている。

・確かに、悪田は多くの刑事事件に携わってきた。難解で解決出来なかった事件もあった。だが、現場第一主義を貫き、現場で汗をかき、多くを学ぶことができた。それが、今の悪田の生き方そのものだ。いっぽう、民事手続きに関しては、わずかにマンション管理管理会社在籍当時、前任者が数年がかりで対応してきた施工不良事件の和解取りまとめに携わった程度だが、未経験の分野を経験することは何よりも自分の力量向上に繋がる。経験値を向上させれば、さらに仕事が楽しくなる。ひいてはお客さんのためになる。

・もちろん、悪田は、行政書士の資格も有していないので、業として裁判所に提出する調停申立書を作成することも出来ない。でも、悪田以上に法律に長けていない理事役員さんたちにとっては、素人が悪徳業者にいいようにやられ、舐められまくった挙句に開き直られ、まるで「ボロマンションに住んでいるヤツが悪い」くらいの馬鹿にされように、不満が鬱積し怒りに震えていた。これを何とかするのが悪田の本業だ。

・マンションの住民さんより負託された、悪田の責務は、間違いを糺すことである。顧問としての悪田は、自身の損得勘定抜きに、この案件には最大限の支援をしなければならないと、この時、覚悟を決めた。

・かくして、悪田において、巨悪に挑む戦いの火ぶたが切られた。

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