・実はそういう決まりはない。多くの管理組合において理事役員を選任する場合、マンション標準管理規約に従い、理事と監事を総会での選任としているのではないか。そして、理事長・副理事長・会計理事等の役職を理事会の互選としているのがほとんどだと思われる。厳密に言えば、監事は理事会の構成メンバーではない。あくまでも組合の執行機関である理事会を監理(監査)する、理事会とは独立した機関であり、不正があると判断される場合において、独自に総会を招集する権限が与えられている。これが原理原則的な考え方。
・実際に理事長を含めた理事役員がどのように選任されているか、よくあるケースを見ると、①輪番制(階層ごと、ブロックごとに役員を選出)、②くじ引き、③立候補により主要なメンバーがほぼ固定、といったパターンが多い。また、任期に関しても、㋐1年ごと全員入替え、㋑2年任期の半数入替え、㋒ほぼ固定、という形に集約される。
・それぞれに長所短所があるが省略する。ただ、どちらが良いかと言うと、これも一概には言えない。毎年、立候補で、永年理事長を引き受けてくれる人の多くは、いわゆる「理事長病」に罹患し、独裁的・独善的にものごとを決めて行く流れになりがち。一方で周囲に気を配りすぎて、些細なことも決められず、二言目には「アンケート」を求める人もいる。ものの見方、考え方、利害関係と相反する全体の利益とのバランスを見れば無難な答えは比較的導きやすい。
・が、そもそも、世の中の男(亭主)連中は、どんなに偉そうに威張っても、例えば、一流企業の上役様であったとしても、かみさんの尻に敷かれているケースがほとんどだ。
・悪田も、これまでの少ない人生経験の中で、立場のある理事役員さんが、家に一歩入った瞬間、驚くほどの豹変ぶりを見せていただいた場面は数知れない。誰が何と言おうと、優秀な学者の分析・解析結果が根拠になっていようとも、これだけは間違いなく断言出来る事実がある。しつこいようだが、限りなく100%に近い確率と断言出来る。裁判官だろうが、国家元首だろうが、教祖様だろうが、神奈川県警察総務部長であろうが、絶対にこれだは万国(国内限定?)共通だと断言できる。
・世の中の亭主は、皆、かみさんの尻に敷かれている。
・「俺は違うわ、クソ悪田」という反発的意見をお持ちの方は、遠慮なく書き込んでほしい。放送禁止用語を使っていただいても、刑法犯に触れる脅し文句であっても構わない。絶対に被害届は出さないので安心してもらいたい。とにかく、世の中の亭主はかみさんの尻に敷かれている。だからこそ、究極の、これが最大最高あんたが大将の着地点となるが、女性が占める割合の高い理事会は結束意識が強く、まとまりがある。想像して欲しい。オヤジがある議題で不完全燃焼のまま、自分に不利になるような要素のある議案を持ち帰ったとした場合、怖いかみさんが、果たして許してくれるだろうか。そういうかみさんは世の中には存在しない。もちろん、許す筈がない。仮に旦那の浮気を許したとしても、例えば自分の部屋のベランダの前を、生ごみを出す置き場に変更するという議題があったとしたら、果たして、かみさんは許すだろうか。許す筈はない。
・しかも、この例は実話だ、悪田が経験した、実際に継続中のある議題だ。
・答えは明快、旦那の浮気など屁みたいなもの。かみさんにすれば、相手から損害賠償を取るとか、旦那に猛省を促すとか、罰を与えるとか、とにかく、いろいろと選択の余地はある。しかし、ベランダの前をゴミステーションにする議題を容認してかえってきた亭主は、間違いなく、かみさんに「八つ裂き」にされる、表現は生々しいかも知れないが、瞬殺されるだろう。
・以前、ベランダでの喫煙の話をした。こういう言い方をして良いかどうかは分からないが、普段、そういう苦情は、このマンションにおいて皆無だった。いわゆる「属性」が高いのか、常識を理解し、ベランダでタバコを吸うような非常識的な人はいないのだろう。と悪田は考えていた。ところがである。悪田がこのマンションに住む、ある女性からの「迷惑だ」との提案を受け、アンケートを実施することになった。驚いたことに、これが超炎上した。タバコだけに火がついた。内容を吟味すると、本当に恐ろしい恨みつらみの言葉が満載されている。
・悪田はタバコを吸わないので、まったく影響ないが、あのアンケートを集計し、結果を公表する時点で、どのような対応をすべきか、今後、望ましい方向性をどのようにするかは、選択の余地はないと察した。愛煙家の方々には、誠に申し訳ない限りだが、鈍感な悪田でさえも、煙の側に肩入れした後のリスクは察するに余りある。要するに、かみさん達が煮えたぎっている。これを怖くないという亭主がいたら、是非、会ってみたい。恐ろしくないというのは単なる強がりだ。
・さて、本題に戻る。
・管理費等の長期滞納となってしまう事情を考慮し、それを批判するつもりは毛頭ない。悪田もかつて自営業者だったことがあり、収入が不安定な中で生活を維持することの大変さを身をもって経験している。ましてや、このようなご時世において、先行きが見えぬ不安感は、耐えがたいストレスとなって多くの人の経済的打撃となっていることは紛れもない事実であろう。
・それをとやかく言うつもりではないことをまずもってお示ししたうえで、長期滞納者が理事役員になることはやむを得ない。ただし、理事長に就任することはやめるべきだし、絶対に認めてはならない。理由は以下のとおり。
・管理組合の執行機関である。理事会はもちろん、理事長が議長となって進められる。案件の決定に際し、総会に準じた取扱いで運用されている。案件によって、これは総会の決議を諮るべきというものもあれば、理事会の先決事項として承認されているものもある。滞納管理費等の支払いに関してもそうだ。理事会決議で決せられている。例えば、管理費・修繕積立金の滞納は全額、支払ってもらうが、駐車場・駐輪場使用料は免除とか。遅延損害金は免除とか。こういうことは理事会決議で決定される。その議長が長期滞納者だった場合、お手盛りになるから、そういう方は理事長になられては困る。まさに利益相反となるからダメ。
・このあたりを理解してもらいたいとフロントマンは訴えるのだが、個人情報開示の問題と、現下の窮状を理解してあげたいという温情が弊害となっていて、実際にはそうならないことがある。実に良くないことだ。
・現実的に長期滞納者とのレッテルを貼られるのは不名誉である。しかし、亭主にしてみれば、自分を尻に敷いたかみさんから「払えないものは仕方ないでしょう」と一蹴されてしまえば、返す言葉がないのもまた、辛い胸の内である。