見ている人は見ている

・警察にも人事評価制度があって、毎年、ある時期に努力目標を立てさせ、結果を申告する。申告を受けた上司が評価し、最終的には、所属長が判断したものが勤務評定として記録化される。これが悪いと昇任試験には合格できない。

・「上司の評価なんかどうでも良い。オレはオレのポリシーにしたがって仕事を進めるから、余計な口出しはいらん」などとほざいている連中は、だいたいはロクな実力もないし、評価が低かったりする。

・テレビのコメンテーターとして元県警OBで警察庁長官賞何百回受賞、本部長賞何万回受賞したなどとうそぶいている方がいる。仮にそれが事実だとすれば、恐れ入った実力者であるが、おそらく嘘だ。それほどの実力者であれば、申し訳ないが巡査部長の階級のまま終わることはないし、少なくとも警部補には昇任させるだろう。

・悪田が実際に見てきた中で、この人は本当に、その道のスペシャリストだと言う人は、数少ないが確かに存在する。例えば、悪田と同じ日に定年退職されたA警部補は、鉄道警察隊におられた物凄い実力者であった。いわゆる「ハコモノ」と呼ばれる、電車内の、すり・仮睡者狙いといった手口の泥棒を捕まえさせたら、おそらく全日本レベルの実力者だ。

・正直、普段から偉そうに能書きばかりこいている、この悪田も、ハコモノの「モサ」は、たった一度しか捕まえたことがない。「モサ」というのは、すり・仮睡者狙いを敢行する連中を示す隠語だ。この手口は、屋外窃盗犯の態様ではあるが、泥棒の中でも、かなり特殊な手口で、捕まえるのは難易度が高いと言われている。

・特に、いわゆる「ハコモノ」と呼ばれる、列車内で敢行するそれは、検挙の難易度がAAAランクで、泥棒以上に泥棒の癖を読み、先回りして犯行を現認する体制を作り、忍者のような華麗なフットワークで仕留める。身た目には警察官に見えない捜査員が大勢の通勤客の中に紛れ、泥棒の動きを探っている。

・退職されたA警部補はその道では、全国的にも名が知られた名刑事で、確かに敵も多かったが、よく捕まえてきた。驚いたのは、長年、その道で生きている大泥棒のモサが、過去に幾度もA警部補に捕まっていて、いわゆる「面(顔)が割れている」なかで、鉢合わせ、前夜、A警部補と立ち話をしたことがあったそうだ。

・泥棒にもすっかり面の割れたデカが、夜回りをしていることを知っているから、当然に警戒する訳だが、翌朝、このモサはA警部補に捕まった。面が割れていて、しかも前夜、言葉を交わしているのになぜと思われるかも知れない。

・しかし、A警部補は相手の心理を逆手にとったそうだ。「前日に知っているモサと言葉を交わしたことで、絶対に相手は油断しているに違いない」と考えたそうだ。その読みは、見事に的中、捕まった時、そのモサは、一切、否認もせず素直に認めたそうだ。

・モサはモサなりのブライドを持っていて、一匹オオカミを貫いていることが多い。

・そのA警部補でさえ、警察庁長官賞を個人で受賞するというのは、なかなか困難だった。それに匹敵すると言われる管区警察局長内賞という価値ある賞を幾度も受賞しているのを、悪田も拝見したが、まあ、例のテレビのコメンテーターが個人で、警察庁長官賞を、何百回というのは、まあ、絶対にあり得ないから、経歴詐称のペテン師のようなものだ。

・名刑事とは、陽の目を見ないものだ。だからペテン師のコメンテーターは、それほどの輝かしい手柄を挙げていたのに、評価されず、在職中、劣悪な上司にばかり遭遇していたということになる。部下の手柄を表彰上申するのは、ほかならぬ警部の役目だから、果たしてコメンテーターは上司から認められていたのか、疎まれていたのか全く分からない。既にこの段階で矛盾が生じている。

・悪田が得意案件である、新幹線の鉄道営業法違反・電子計算機利用詐欺の事件を指揮させていただき、部下を表彰上申して警察本部長賞を受賞してもらったことは、以前に書かせていただいた。上司は一生懸命に頑張っている部下を評価し、手柄を上申して受賞させる。あるいは、昇任試験に合格出来るよう、忙しい合間に勉強をさせ、実務能力向上のための機会教養を行い指導・育成することで良い幹部が育つ。

・良い幹部とは、実務能力に長け、部下に対する指導力・牽引力があり、チームの総力をいかんなく発揮出来る取りまとめ役となることだ。A警部補は一匹オオカミで敵は多かったが、上司には恵まれていた。対してコメンテーターのような刑事がチームの中で我を張ると、集団の中で浮いた存在となり、結果、まとまらなくなってしまうので、必然的に主要な仕事を与えることが出来なくなってしまう。

・浮いた存在のはみ出し者に、栄誉ある受賞をさせてしまうと、本当に一生懸命に努力し、困難を乗り越えて成果を挙げたチームの中で不満が噴出してしまうから、そういう人物を賞揚することは出来ない。仮に指揮官である警部が、コメンテーターを賞揚しようとしても、その上の上司が、全体の動きを見ているから反対する。故に、経歴詐称ということになる。そもそもあり得ない話だ。

・民間会社での評価基準は単純極まりない。社長から気に入られるか嫌われるかだ。弊社「こころの通う管理」もそうだ。自分を取り立てて欲しいと願えば、社長に認めてもらえばいい。ただそれだけのことだ。50歳をゆうに過ぎた悪田の目線で、今更、取り立てて欲しいことは何もない。

・ただ、生意気で口の減らない、この私を、この先も平社員として定年まで雇用してさえくれればそれでいい。

・今朝は新聞各紙が休みだったので、それに代わる時事ネタを全社員に発信させていただいた。先週、報道された国土交通省が発表した、いわゆる「事故物件」に関する指針だ。弊社「こころの通う」も主体的に不動産を取り扱っている関係上、このあたりの情報は、タイムリーに根拠立てて全社員に共有されるべき情報だ。

・差し出がましいことは承知のうえ、発信させていただいた。

・社長は、たいへん喜んでくれた。別に社長を喜ばせるためにやったことではないが、どこかで誰かが見てくれていることを、改めて感じる良いきっかけとなった。

・当然に、明日からまた頑張ろうと思える、良いきっかけとなった。

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