歪んだ窓から陽はまた昇る

・あるマンション居住者から、原因不明の窓ガラスの歪みが発生したとの相談があった。お部屋の中からでないと確認が出来ないため、取り急ぎ、写真を送っていただいた。確かに歪んでいる。

・どのような歪みかというと、それが誠に奇妙な形で、細かな水泡が形成されたような形となっている。中古住宅として数年前に購入された際は、あまり気にならなかったそうだが、最近では、窓越しに外の景色が見れなくなってしまったので直して欲しいとのご要望だ。

・窓ガラスは専有部か共有部かと聞かれれば、共用部である。その根拠は、マンション標準管理規約(単棟型)第7条第2項第3号「窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする」である。このため、いわゆる自然現象による破損や、原因者不明それ、加害行為行為者不明のそれの修繕費用は、組合負担となる。

・ただし、現調しないと症状の原因も範囲も分からない。

・また、ひとえに共用部の修繕とはいっても、自然現象による劣化の場合、同様の不具合が他のお部屋でも発生している可能性がある。少なくとも、通常、窓ガラスは竣工時に同じ仕様で作られているから、同じ面のお部屋では、同様の不具合があってもよさそうなものだが、このような相談は初めてである。

・悪田はいただいた写真を職場の先輩に見せたが、誰しもこんな症状は初めて見たと眉をひそめた。ネット情報では、複層ガラスあるいは真空ガラスにおいて、変形の症状が現れることがあると書かれているようだが、このような奇怪な現象が起これば、管理会社に問い合わせがありそうなものである。

・「斜光フイルムを貼ったのではないか」「フイルムとガラス面に膨れが生じ、このようになったのではないか」確かに、いろいろなことは考えられるが、居住者はそんなことは知らないという。曇った窓から見える外の景色は幾何学模様で不気味だ。

・分からない者同士が推察したところで答えは出ないから、現調して専門家に見てもらうとともに、次の理事会で頭出しをしておく必要があるので、その準備にとりかかった。

・しかし、何かと忙しい。今日やるべきこと、今すぐやらなければならないこと。その事務量の度合いは担当者であれば、容易に想像がつくから、結局は今夜もマズラーを食べ、会社への泊まり込みとなるパターンだ。前日の朝、6時前から仕事をしているので、結局は当直と同じ仕事量、いや、それ以上かも知れない。しかし、まだ現場対応をしていない分、こちらの方が楽かも知れない。上司への報告もないからはるかに楽だ。楽な分、給料も少ないが、それを言ったところで増えはしないからやめておこう。

・午前0時を回る直前に、上司がようやく帰った。悪田もそろそろ一区切りをつけると話したら「それじゃあ一緒に帰りましょう」と誘われたが固辞した。悪田には悪田なりの24時間の過ごし方があるから、他人の都合に合わせた動きに付き合うのはまっぴらごめんだ。

・今日もいろいろなことがあった。

・一日中、振り回されながらも内容の濃い一日だった。明日は昼で上がる。そう決めたからには、絶対にそうしようと誓った。

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