・ある上司に業務報告をしていた時のこと、先日、顧客とトラブルになったメールのやりとりについての着地について話し合った。
・今更、言うまでのなく、マンション管理会社のフロントマンは、たいへんにストレスが溜まる仕事だ。
・顧客から言われる理不尽の数々はとどまるところを知らないし、どんなに先回りしてその利便性のために粉骨砕身して働いたとしても、そんなものは「当たり前だ」と考えている人の心には響かないことが多い。
・逆に、ひとたび不満が爆発すると、その怒りの矛先は担当するフロントマンに向けられるし、ひとたびトラブルに巻き込まれると、そこからの脱出は困難だ。常に多くの人との関わり合いの中で、特に揉めている場面に飛び込むことは、まさに「渦中の栗を拾う」ようなものだ。
・こちらがいくら正論を述べても、それが気に食わない顧客にとっては、余計に怒りの火を強める燃料ともなってしまう。こういう人の多くは、そもそも「オレは客だ」と管理会社を見下しているから、見下されている者の視点には立たないし、見下している者に意見を求めない。だから余計にたちが悪い。
・一生懸命に努力すれはするほど、頑張れば頑張るほど、結果がむなしく感じられることが多く、たぶんそれが離職率の高さを表しているではないかとの結論に至った。その結論が実際にこの仕事に従事している人が感じている感想ではないだろうか。
・ところで、その上司が話す、弊社のある幹部がいて、この人は自分に降りかかるストレスの発散に長けているのだそうだ。確かに、悪田も幾度か本人が話していることを耳にして、この人は「ストレスに対し巧だなぁ」と感じた。
・その手法を一言で表現すると「トラブルを楽しむ」のだそうだ。例えば「顧客に文句を言われる」「怒りに任せて強い口調で接する」「顧客どおしが言い争う」「自らがトラブルの発信源となる」など、問題が起こる都度、その内容を冷静に見つめ、内心で「それを楽しむ」のだそうだ。
・おそらく何を喜んでいるのか、意味が理解できない人も多いと思う。また、人の怒りの感情を楽しんで見ることに違和感を感じる人もいるとろう。だが、この幹部は仕事を通じて寄せられる要望や苦情が、常に怒りに任せた感情と一体となってなされることを知り、あえてこれを「面白い」と感じるように捉えているのだそうだ。
・この発想の転換が凄いと悪田は感じた。たしかに一理ある。どんなにこちらが冷静になっても、相手の感情をコントロールするには膨大なエネルギーを消費する。まともに相手をしたところで、正論や常識、作法や流儀をないがしろにして傲慢な態度で接してくる人を改悛させることなど至難の業だ。
・であれば、変りようのないものを変えようと努力するのではなく、むしろその異常な言行を冷静に見つめ楽しんでおれば、自分か想定していない別な次元の世界を見つめることが出来る。
・それを「面白い」と感じることが出来れば、ストレスはなくなって来るという発想だ。
・やはり、物事は経験者から聞くのが一番だ。それも物事を深く経験している人から聞くことが肝心だと気付かされた。