立会いはどの程度必要か

・あるマンションの消防用防火水槽へ繋がる給水フレキ管からの漏水が発生し、バルブを止めていた。フレキ管とは配管をアルミ製の鋼材で被覆したもので、凍結や衝撃を防止する役割りをもっている。配管に特殊な被覆がなされているので、施工がやや割高となる。

・消防用防火水槽へ繋がる給水管からの漏水であったため、万一の火災に備え急ぎ工事を発注した。当初、2日間の工程で実施する予定でいたが、幸いなことに1日で終わることが出来た。

・施工に関し、我々、管理会社が立会う必要がある工事と、その必要性がない工事では、明確な基準がある。

・まず、自社が受注した工事の場合は、原則、元請けである管理会社の立会いが必要だ。フロントマンやアフターサービスの担当者が立会えない場合でも、少なくとも管理員にお願いして立会いを行っている。

・立会いの意味としては、下請業者の工事を監理することと、施工中の事象に対応するという意味合いがある。特に安全管理という面においては、施工中におけるさまざまな事象に元請けとしての責任を果たす必要があるため、必ず立会うべきだ。

・ではその間、ずっと施工状況を見ているのか。悪田はそこまでは行っていないし、その必要まではないと考える。

・施工はプロに任せている。必ず写真をお願いし、フロントマンは別な現場を掛け持つか、作業が出来るスペースで他の仕事を兼ねて対応している。もちろん立会いのために来館しているのだから、メインの業務はそれであるが、要所要所に顔を出し、監理するようにしている。

・理由は、ただ黙って「ボーッ」と職人の工事を眺めていても生産性がないからだ。フロントマンにとって、外に出るということは、出たついでに、他の仕事も片付けて来るという責任を果たす必要がある。

・いつも書いているように、この仕事に暇という文字はない。いや、むしろ、体を壊してしまうレベルの忙しさだ。悪田も既に若くはないので、かなりしんどい。だが、自分が担当している業務は、自分以外の人は片付けてくれないので、せっかく外に出る機会があるのなら、そのついでに出来ることをやっておかないと業務が回らなくなる。

・このフレキ管交換の立会いにおいて、悪田は午前中の2時間、小スペースを使わせてもらいながら、週末に行った集会の議事録を作成した。そして、工事が落ち着いてきたころを見計らって、これまた別のマンションの集会でお願いされていた壊れたセンサーライトの補修対応に当たった。

・外に設置された、人感センサーライトがいつの間にか破損してしまい、修繕の見積りを提出したが、理事役員さから「折れた箇所を接着剤でつけられないか、あるいは必要性を考慮し撤去する見積りで安価に対応出来ないか」との宿題を与えられていた。前回、その宿題に対応すべく、取り急ぎ、ホームセンターで瞬間強力接着剤なるものを購入しておいたが、施工する時間がなく、先延ばしになっていたので、この外に出る機会を利用した。

・また、別なマンションで通常総会を目前に、決算理事会を開催し、会計理事さんに監査資料をお渡ししていた。その資料の提出があったと管理員から連絡があり、この機会に回収に回ることとした。

・立会いの中、配管の修繕業者さんに、別な要件で外に出て来ることを告げ、向かったマンションで脚立に上りセンサーライトの接着を試みたが、全く歯が立たなかったので諦めざるをえなかった。

・その後、別なマンションで会計監査資料を回収し、給水管のマンションに戻ってきた時には、既に作業が終了し、現場の作業員は引き上げていた。給水管が施工されていることと、バルブがちんと開いていること、さらに、通用扉がきちんと施錠されていることを確認し、打ち合わせたとおりの場所に鍵が戻されていることを確認し終了を自分の目で点検した。やはり、通用口の施錠がきちんとなされていなかった。念のため再確認して正解だった。

・会社に戻り、週末の集会でもらった、おびただしいほどの宿題を片付けつつ、月に一度の会議に参加した。

・会議終了後、また別のマンションで言われていた、自転車の不法駐輪を見に行き、ステッカーが貼っていない自転車への掲示と掲示版への告知を行った。もちろん、後に所有者が分からない場合に備え、警察への通報を見据えながら、車体番号等の特徴を懐中電灯を駆使しながら行った。

・折しも雨が降り始めた。印字された紙を貼っただけでは「水に塗れて読めなくなるだろう」と言われそうなことを先読みした。こういうことにクレームをつけて来る住民が、対応したフロントマンに対し、次に何を言うのかは、だいたい予測出来るようになってきた。

・後で余計なクレームを言われないよう、短冊状に切った紙をラミネートフィルムでコーティングして短冊状に切り、これを丸めて自転車のハンドルに括りつけて、端部を綴じた。もちろんラミネートフィルムの角が尖っているから「怪我をした」といちゃもんをつけられないよう、角を丸く切り落とした。

・余計な仕事ではあるが、小さなことを問題視する人はどこにでも必ずいる。また、どうせ外に出るならば、ついでにやるべきこと、やらざるを得ないことをまとめて対処しなければ、本来業務が片付かない。

・それでもなかなか休めないので、代休がどんどん積みあがる。退職する時には、長期休暇をしっかり取得して、晴々とした気持ちでこの仕事を終わらせてやろうと考えた。

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