募金に始まり募金に終わる

・悪田権三が加入する町内会において、今期の班長が回ってきた関係で、募金に忙しい話を以前に書いた。

・前年度の班長からの引継ぎで、年に三回あるとは聞いていたが、さすがに、この間終わったばかりで、正直「またか」といった感があった。年末恒例の「アレ」だ。

・とはいえ、町内会班長の役割りは、守備範囲内に与えられた「シマ内」の会員から、いわゆる「みかじめ料」を回収することにあるから、上納金たる「町内会費」や任侠団体として困っている人たちのために「活動資金」としての募金活動を行うことは、組織の一員として、必ず行わなければならない義理ごとである。

・こうして町内会班長の活動を報告していると、どことなしか反社会勢力の活動と似ているように思われるかもしれないが、町内会と反社会勢力は資金源獲得活動のやり方は酷似している。いずれも任意の活動団体で加入・脱退は本人の自由意思で決められる。加入を継続する以上、上納金制度があり、お給料はもらえない。シノギは自力が鉄則だ。営利を目的とする団体ではなく、相互扶助のために存在しているので課税はなされない。上意下達、下意上達の組織で、親の意見は絶対だ。組織内には掟があり、禁を破った者には制裁が加えられる。

・今はあまり聞かれないが、ある集落においてもはみ出し者に対し「村八分」というNBAバスケット選手に似た名称の制裁があったのはその一例だ。もちろん反社会勢力においても、不義理を行った制裁には、不義理の度合いに応じた懲罰制度がある。

・さて、ならず者の組員達(町内会員)をとりまとめる班長を与えられた悪田としては、一筋縄で行かない連中から義理を回収するという任務を与えられた。とはいえ、持ち回りでやっている仕事だから、あまりにも不義理な振る舞いをすると、今度、自分にその役目が回ってきた時に、仕返しされないとも限らない。だからこそ、なるべく穏便に常識的な時間帯に、常識的な金額を回収出来れば良いと願っている。

・「おたくは警察官で年収1000万円を超えているから、それに見合う金額を寄越せ」とか「おたくは、商売がうまく行って羽振りが良さそうだから、あのベンツを売却してでもそれなりの金額を用意しろ」といった無理をお願いすることはない。

・ある種の目安として、募金種別によって「500円以上は標章を出せ」とか「2000円以上はきちんとした領収証を切れ」とか「いくら出せば良いかと聞かれたら『適当に300円とでも言っておけ』みたいなことがマニュアルがあった」ため、悪田は独断で「上限を300円」と決めた。これに関して直接的に文句を言われたり、悪い噂を立てられたりしたことは今のところない。

・幸いなことに悪田はマンションに住んでいるので、組織に上納するための会費で地回りをすることはない。管理会社が「ファクタリング」と呼ばれる集金代行会社を使って管理費・修繕積立金・有料施設利用料・町内会費・ケーブルテレビ利用料などを一括で収納口座に入れたものの中から、町内会の請求によって年度分をまとめて支払っている。支払う側も集める側も楽だ。

・だが、しかし、国土交通省はこのような集金方法を「好ましくない」として、町内会費と管理費等の集金を一緒にしないように指導している。ちなみに、マンションの規約で町内会への一斉加入を義務づけた、いわゆる「精神的条項」も無効だとしていて、現標準管理規約には「コミュニケーション形成のための云々」という記載はない。

・で、悪田流の〇特(マルトク:反社会勢力の上納金が盆と暮には倍に跳ね上がる制度を言う)みかじめ料集金方法がこれだ。非常に評判が良いので、是非、お役立ていただければ幸いだ。

・この短冊を封筒に貼付して投函するだけで、脅威の回収効果が期待出来る。前回の赤い羽毛の募金の時は、何と回収率100%だった。コロナ禍で人が訪ねて来られるのを嫌がるであろうご家庭もあるなかで、この方法で投函してもらえれは、集金業務に足しげく通う必要もなくなり、お互いにウィンウィンの関係になる。

・現に悪田が引継ぎを受けていた「町内一」と囁かれるほどに募金嫌いのある居住者さんも、悪田募金に協力してくれなかったことは一度もない。別に悪田が悪徳高利貸しの切り取り屋のような振る舞いで威勢よく乗り込んで行ったことは一度もないのに、たった一枚の封筒に500円とか300円とかの愛情を込めて投函して貰えているのは、心が温まる。

・仮に協力が得られなかったとしても、その方からは間接的に「募金には協力したくない」という意思を汲み取れたことになるから、無駄な釈明や「泣き落とし」も必要ないし「小銭がない」という言い訳を深読みして「あそこは300円の金もないくらい生活が困窮している」などの不名誉な噂をたてられる心配もない。

・などなどと↓本文に書かせていただいたとおり、今年は募金に始まり募金に終わった1年だった。とはいえケチな悪田は、募金一回あたりの出資額を100円と決めているので、300円の寄付が家計に大きな影響を与えることもなかった。

・いずれにしても、工夫ひとつで、善意の協力に繋がり、これが良い形で困っている人のお役に立てられるのであれば幸いな限りだ。

・なお、悪田は一年半のフロントマン生活の中で、区分所有者からの圧力に押され、町内会を脱退する事務手続きを二度行ったことがある。かりそめにも町内会を脱退することで、こういった助け合いの輪に参加できなくなることに思いを致すと、どこかしら、もの悲しさを感じる。

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