歩み寄る姿勢その③

【前回②からの続きとなります】

・ 賃借人さんからの窮状を聞き、悪田は、その要望内容を音源の方にお話しすることにした。

・ そもそも、人には人の生活スタイルがあり、それを他人に干渉される筋合いではないというのはごもっともな話だ。

・ しかし、だとするのであれば、この種の近隣トラブルは、当事者同士の問題として、自分たちで解決すればいい。自分たちのトラブルに周囲を巻き込むのは迷惑このうえない。

・ 自分たちで解決が困難だとして、周囲の手助けが必要ならは、その意見に耳を傾ければいい。この場合、音源の当事者が管理会社に中に入って欲しいというならば、最低限の常識として、自分自身に歩み寄る姿勢を見せなければ、問題解決など、絶対にありえない。

・ かくして悪田は、音源の女性に、相手の方からの「うるさくて眠れない」との訴えを、窮状として訴えられていることをやんわりお伝えした。

・ すると、女性からはこんな返答が帰って来た。「私には私の生活スタイルがあるのだから、それを変えるつもりはない。だいたいその方は賃借人なんでしょ。賃借人のくせに生意気でしょう。集合住宅は音が響くのは仕方のないことなだから、少々の音くらい我慢するように言いなさい」

・ 正直、悪田は、この返答を、予想していた。

・ 身勝手このうえないということを指摘することすらアホらしいと感じてしまった。例えるなら「自分の理不尽は正当だということを相手に伝えなさい」と管理会社に命令しているもの。管理会社にとっては、たとえ賃借人とはいえ、マンションという区分所有者の資産を借用して使用している、間接的なお客さんであることに変わりはない。

・ 当然に「それは出来ない」とお答えした。「なぜ言ってくれないのか」と詰め寄られたが「それを伝えると、相手方が逆上して収集がつかなくなる。客同士が余計にトラブルになることを誘発することは出来ない」と返答した。

・ いくら、お客様からの命令であっても出来ないものは出来ない。

・ 故に残念ではあるが、この問題は解決しないだろうと感じた。音源側の当事者がマンションという共同住宅の特殊事情を考慮をして、自ら歩み寄る姿勢を示さなければ、いくら他人がとやかく言ったところで、空しいだけだ。

・ いずれ、近いうちに再び、何ら解決されないことに被害者の怒りが噴出してくるだろうと確信した。

・ 案の定である。それから約2ヵ月後、音源から再び、悪田あてに苦情の電話が届いた。

・ 窓越しに、廊下越しに「うるせぇなこの野郎」と怒号が響いたそうだ。

・ これは、女性側にとって、相当に危機感を感じたようで、今すぐ何とかしなさいといった切羽詰まった口調だった。

・ しかし、悪田は女性からの申し出を穏便にお断りして、お電話を切らせていただいた。歩み寄る姿勢はないというから。

・ 女性はここでも、悪田に対し「賃借人の分際で生意気」とか「少しくらい我慢するのは当然」などとの言葉を発した。

・ そもそも、悪田の忠告に全く耳を貸さなかったのは、女性の側。しかも、騒音問題は当事者どおしの問題だということを説明し、自ら解決するための努力をしなければ、相手方がストレスを感じることを説明していた。

・ さらに、悪田は、管理会社の本来業務を超えた大サービスの一環として、相手方と連絡を取り合い、仲裁役となっていることを女性に説明したにもかかわらず、女性は、それは当然のごとく吐き捨て、相手方が賃借人と見下し、少々の騒音くらい我慢しろといったことを口にしており、これらは、傲慢以外何ものでもない。

・ そもそも、この種のトラブルは、お互いに歩み寄る姿勢がなければ、絶対に解決しないことは何度も説明しているにもかかわらず、相手方のみならず、管理会社を見下し、自分の思う通りにしなけれは納得できないとの主張を変えない。

・ とはいえ、騒音被害を感じている賃借人さんも、相当に不満を感じていることが理解できた。

・ このため、携帯電話のメッセージで「窮状を一人で受け止めることなく、困ったことがあれば、遠慮なくご相談ください。解決できるきっかけがあれば、一緒に考えて答えを探って参りましよう」と送った。

・ 賃借人さんからは、過分なる御礼のメッセージが返ってきた。

【次回、この件に関し、騒音加害女性から悪田あてに届いた、激励のお手紙の内容をご紹介します】

 

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