巧遅は拙速に如かず

・宝くじという、極めて高額当選確率の低いゲームにおいて、チャンスを掴む方法をご存知だろうか。

・そう、必ず購入することである。

・どうせ購入したところで、高額当選する確率は極めて低いわけだから、買うだけ無駄と考える堅実的な人は、このチャンスを掴むことも「当選したらどうしよう」と夢を見ることも出来ない。

・今般、悪田権三は、あろうことか、たまたま10枚連番にて購入し、見事、3,300円の高額当選の夢を掴むことが出来た。これは、我ながら凄い確率を得たと、自分の運の良さに大満足している。

・さて、人間、疲れが蓄積してくると必然的に休憩したくなるものだ。特に、先週は(も)サービス出勤(宿泊を伴う)が続き、形式的には休んだことになっているようだが、実質的に仕事に振り回された一週間だったから、50歳をとうに超えた悪田も、さすがに休息が欲しい。

・偶然にも、本日、直属の上司でマンション管理士の先輩でもある方と話をする機会を与えていただき、上司が仕事に向き合う悪田に、思いの丈を聞かせてくれた。

・悪田に対する要望は二つ。ひとつは「休みをしっかりとること」もうひとつは「遠くない将来、上長職を与えられるので迷いなく受けて欲しい」とのこと。

・二つとも固辞させていただいた。

・良し悪しは別として、固辞して社長の恨みを買ってクビになる良いチャンスだと考えた。この先、そういうことになった時には、辞令をこのブログに貼って、即日、自己都合で退職したことを宣言する。あるいは、固辞してクビになったこと、あるいは固辞したことにより、理不尽な配置換えをさせられたことを読者の方々に知っていただき、ネタにさせていただきたいと考えたくらいだ。

・別にクビになりたくてこの仕事をやっている訳ではないし、逆に上司にへつらって出世を望んでいる訳でもないが、申し訳ないながら、中途半端な立ち位置で鼻くそみたいな役職を与えられるのはまっぴら御免だ。

・曲がりなりにも悪田権三は㈱億山の代表取締役なので、何故、法人の代取が、中小零細企業の主任だか係長だか訳の分からん立場を与えられなければならんのかと考えると、実にこっけいだ笑

・前にも書いたが、悪田権三が警察を辞めた理由は、警視正になれないことが分かったからだ。それ以外の理由はない。50歳の警部に、警視正になる道筋はない。単にそう感じたから、警察という選択肢はなくなった。当時、年収は安くはなく、今では、その3分の1だが、それはそれで何とか食べて行けているから幸せだ。

・つまらん役職を与えられて、一生、アホな上司や、実力もない中途半端な部下に迎合して、良好な関係性を構築することは悪田には出来ないと判断したから迷いなく辞めた。その選択に誤りは無かったと思えるような余生を送りたい。

・悪田が大切にしていることは、スピード感と感性だ。その完成度や緻密さの極限を求めているのではない。モタモタと遅いのは大嫌いなだけだ。もちろん、仕事には緩急が必要であることは理解出来るが、仕事をダラダラと引きずりながら、やるべきことをやらないで、先送りにして、能書きばかりこいて、物事を後回しにして、組織に胡坐をかいている連中というのが、悪田はどうも許せない。

・「ある程度、割り切ることも大事だ」ということは、多少、理解できる。出来ないことを無理して取り繕うとすると、随所にボロが露呈するから、出来る範囲で努力すれば良いことは理解している。与えられた守備範囲の全てをやり切る必要がないことも、当然に理解できる。

・しかし、悪田が描く上司の理想像とは、率先してめんどくさい仕事を請け負い、部下に模範を示して成果を挙げるのが神髄だと思っているから、それと対極的な動きをしている今の上司を見ていると、警察であれ、民間会社であれ、ある種の哀れみを感じるだけだ。

・警察の幹部もダメなのばかりだ(※かなり、いいのもいる)が、民間、特にうちのような中小零細企業も大して変わらない(※うちにもいいのがいる)。そんな連中と一括りにされるのはまっぴらなで、時期が来て「はい、君も晴れて主任だからおめでとう」と辞令をいただいたら、即刻、退職させていただく。その時、悪田がエース級のフロントマン、あるいはマンション管理士になっていられるよう、自分を向上させて行かなければならないと考えているから、今は修練の時だと考えている。

・今日、悪田は岐路につくべく、久しぶりに電車に揺られていた。ところが乗ってすぐに、あるマンションの理事役員から「管理員室の窓が全開になっていますが、どなたか入られていますか」との連絡をいただいた。

・管理員さんが窓を閉め忘れて帰ったことはすぐに想像がついた。

・本音を言えば、疲れていたから、悪田はこのまま帰りたかった。たぶん、日中、穏やかに晴れていたから、明日まで雨が降ることはないだろう。雨水が吹き込まなければ、漏水の心配もないだろうと考えた。

・実は、悪田は明日に引き延ばそうと考えていた仕事がもうひとつあった。帰り際にあるマンションの理事役員から「インターホンの調子が悪いという現象があるようですが、うちも画像がおかしいので、点検してもらえますか」との相談をいただいていた。

・緊急性のある案件ではないから、明日で良いと考えていた。だが、どうせ窓を閉めに、そのマンションに行くなら、そのついでに自宅への通り道にある、インターホン不具合のマンションに寄って全戸投函し、インターホンの不具合を調査している案内文を作成して投函すれば、後回しにした業務が前倒しになると考えた。

・そして、悪田は、電車で引き返し出社した。会社で、インターホン不具合アンケートを作成し、窓全開マンションへと急ぎ車を走らせた。窓全開マンションはその名のとおり、まるで「社会の窓」が全開になって、白いブリーフがファスナーの隙間から見えるくらいに窓全開であった。理事役員指摘のとおり、窓は全開だったが晴天に恵まれ難を免れることができた。

・ほっと胸を撫でまわし、社会の窓を閉め、悪田はインターホンマンションに車を走らせた。

。それから20~30分ほど車を走らせたところだった。急に土砂降りの雨が地域一体を襲った。予期せぬ夕立ちだ。悪田は「助かった~」と考えた。あのまま、窓の開放を先送りにして、翌朝、閉めに行くことにしていたら、おそらく、この豪雨で管理員室はびしょ濡れになり、ややもすると、漏水原因となっていたかも知れない。

・それを未然に防ぐことが出来たのは、社会の窓が開いていると理事役員の忠告があったから、それにすぐ対処することが出来たからだ。

・同様に、インターホンシステムの不具合を認識したうえで、明日以降でのアンケートとするには、あまりにも対応が遅い。そもそも、本来、理想とする悪田の流儀に反している。昨今のインターホンシステムは、自火報と連動しているから、仮に、今夜、そのような事象が発生しないとも限らない。

・不吉なことを述べて不安を煽るのではなく、管理会社がまず、優先すべきことは、住民の安心安全だ。まして、理事役員から不調を聞いた以上、その日のうちに対処するために動くことは、フロントマンとしての矜持だ。

・夕立はますます強くなり、ワイパーの速度も速くなる。しかし、悪田は窓全開の指摘に感謝した。そして、インターホン不具合のマンションにて、全戸投函を済ませ、帰路についた。たぶんインターホンマンションの理事も急ぎの対処をしたことは理解してくれるだろう。中身は稚拙だが、素早く対処出来た。それが標記の重要性だから今日のタイトルとしてみた。

・夕立は、ますます強く打ち付けたが、悪田の自宅近所に近づくと、次第に雨足は弱くなり、到着とともに止んでくれた。日中に舞い上がった塵や埃が一掃され、悪田の住む集落は、夕映えにキラキラと輝いていて、とても美しかった。

・悪田はついている。そう再認識した。もちろん、また明日もついている。

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