・ 警察官として、長年、働いていたせいか、人と接する際に、ある種、抜群に嗅覚が働くことを感じる場面がある。
・ そこに根拠があるかと聞かれれば、ない。いわゆる「刑事の勘」というアレが判断材料となっている。
・ だか、しかし、それを研ぎ澄ますことで、ある種のセンスが磨かれ、ふとした疑問がきっかけとなって、難解な問題を解決する突破口となることがある。
・ だからこそ、根拠のないものを単に切り捨てるのではなく、多角的な視点に立って観察し、判断材料に生かすことは物凄く大事なことだと、今でも考えている。
・ こうした経験は、マンション管理会社のフロントマンとして働いていた当時も大いに役立った。特に、社内で誰もやったことのない案件に取り組んだ時には、組合員さんからの合意形成をどのように取るかという課題に直面するうえで、欠かせない。
・ 例えば「共用場所の喫煙禁止」「上階からの寝具の落下」「町内会の退会」「騒音問題」といった、一方当事者の利便が他方の利害と対立する案件の場合、組合員さんの中に賛成派と反対派、加害者と被害者が存在する。
・ 本来、騒音問題に関しては当事者の問題であるので、管理会社として関与すべき案件ではないが、マンション全体の問題として、進めるべき案件に関しては、審議を慎重に進めつつ、ある程度のスピード感も必要となるため、事前の根回しや、アンケートを通しての周知等も重要となる。
・ 案件によっては決定後も、無言のままにルールを無視するという行為に及ぶ人もいるので、決定に際して、例えば、その決定事項を守らなかった人に対してどのような形で周知を図るかを提案し、事前に協議したうえで議論を深める。
・ 集合住宅に住む多くの人は良識ある善良な市民であり、サイレントマジョリティ(物言わぬ多数派)である。しかし、日々の生活の中に、多かれ少なかれ不満や不安を感じているものであり、身近な存在と感じる管理員さんやフロントマンに相談がなされることがある。
・ 中には、退屈凌ぎの憂さ晴らし的な内容のものもある。問題を解決するためには、その人が引っ越す以外に解決しないものもある。そもそも、マンションが共同住宅であることを認識していない人もいる。
・ しかし、多くの問題は、担当者がそこに向き合うことで、解決に大きく前進することがほとんどだ。少なくとも、解決せずとも、担当者がそこに寄り添うことで、相談者との間で糸口が共有出来る(ことがある)。
・ ところが、管理会社の業務がサービス業であることを良いことに、自己本位に不満をぶちまけ「かけた梯子を外される」という信頼を裏切る行為に及ぶ顧客もいる。
・ 次回、ある具体例に触れていく。