・ある利用者さんがおられます。知的の障害をお持ちですが、驚くほど学習レベルか高く、歴史やクイズが大好き。昭和レトロが大好き。往年の昭和スターに関する知識は、悪田など足元にも及びません。
・性格は、慣れない人には、やや人見知りです。男性職員よりもどちらかというと女性スタッフと打ち解けやすく、話しやすい人には積極的にクイズを出してくれる。悪田の事業所は、日中の活動場所(作業所)となりますので、作業により得られる工賃を目的とする利用者さんが多いのですが、この方はそうではありません。
・自分のペースでゆっくりと過ごせる居場所を求めて利用されています。散策や日々のお出かけ好きで、よく、悪田の買い物にも同道してくれます。また、事務連絡等て隣の事業所に顔を出す時も必ずついてきてくれます。隣の事業所の職員さんや利用者さんにも受け入れられる人気者キャラです。
・やや、問題を抱えています。グループホーム(GH)にお住まいなのですが、一部、職員さんとの関係性に問題があるようです。例えば衛生面で体や頭をきちんと洗えていない。爪も伸びっぱなし。お部屋の片づけも出来ていない。起床時刻が守れない。気分を損ねる言動があるとキレる。食器を床に叩きつける。職員に手をあげたこともある。などなど・・・。外面に反して、内々では暴れるといった問題行動が、やや、常態化しているようです。
・親後さんは、GHと、さほど遠くない場所にお住まいなのですが、ご本人の自立を希望しており、今の生活が定着しております。元々、就労を目標とされ、今のGHにお住まいになることにされたのだそうですが、就労先で強制的に作業をさせられることで馴染めず、次第に通えなくなり、数年間、日中の活動場所がない状態だったようです。
・その後、当事業所を紹介いただき、体験通所を経て、正式に通所がなされるようになりました。悪田とも関係性が良く、他の職員さんや利用者さんからも可愛がられ、事業所において欠かせない存在として定着しました。
・標記の「私の考えは間違っていることに気づかされました」の言葉は、その方の親御さんが、ある日の支援者会議の中で発せられたお言葉です。自立とは、例えある程度の障害があろうとも、社会の一員として、出来ることに一生懸命に取り組んでこそのこと。仕事もせずに自分の好きなことだけをやるというのは単なる堕落に過ぎない。元々、親御さんにはそのようなお考えがあったようです。
・しかし、直近時点において、ご本人が楽しく伸び伸びと日々を過ごしておられる姿をご覧になり、最近になって少しずつ考えが変わったのだそうです。その支援者会議の中で、当のご本人は、昔、休日に家族でお食事に出かけた際に、携帯電話で、仕事の個別案件に親御さんがご対応されていた姿を見て、当時「ああ、親はたいへんなんだな。僕を養って行くために、休日でも仕事の対応をしなければいけない。親には感謝しなければならないが、自分は大人になったら、このように頑張れるだろうか不安だ」と感じたとのこと。
・逆に、この言葉をお聞きになった親御さんから、標記のお言葉が寄せられました。雑感としての何気ない感想と言った雰囲気ではありましたが、障害を持つ親御さんの苦難のお気持ち、人生という時間軸の中での「ひとときの安心感」といった安らぎのお気持ちを表していました。この言葉は、悪田の胸にも深く刻まれました。
・さて、GHでの問題行動の数々について、先般、支援者会議が行われました。今回は、本人や親御さんを交えてという形式ではなく、実際に日々の生活に向き合っているスタッフや計画相談等を交えてのやりとりでした。
・問題行動の背景には、本人の「発達」に由来する障害が原因となっているのではないか。であるとするならば、専門的知識を有するプロの意見を聞き、矯正のためにはどのようなプログラムがあり、そこにはどのようなメリット・デメリットがあるのかなどが話し合われました。
・専門家は、発達障害(自閉スペクトラム)の可能性が考えられるとの見解でした。正式には専門機関での検査を受けなければ判断出来ないが、それを窺わせる所見が随所に見られる。ただ、検査を行う前提として、矯正を目的として行わなければならないので、コンサルタントを行うには、ご本人・親御さんからの依頼が必要。矯正を目的としないのであれば、検査をすることは意味をなさない。
・矯正のためのプログラムは、専門的知識・経験をもったスタッフがマニュアルどおり、システマチックに進められる。そのための障害認定の見直しはもちろん、単身・独居によるミドルステイの施設への転居、日中作業場の変更などなど。慣れない生活環境での新たな生活となるため、本人にとっては心的な負担が伴う。自分で考え、取り組む意欲を増進させることを目的としているので、他人の目には、半ば強制的にやらされているようにも映る。「強制的にやらせるのは良くないのではないか」との意見もある。専門的知識をもったスタッフにより、マニュアル通りに行われるので必ず、成果に現れる。このような内容の説明でした。
・ご案内のとおり、悪田は元警察官で、元宅建業者で元マンション管理会社のフロントマン。福祉の実務経験はございません。ましてや精神・知的・発達といった障害を持つ方への対応といった知識や経験も浅く、専門家という技量には程遠い。
・しかし、知識・経験が浅い中でも、手探りの中で利用者さんと接し、失敗を積み重ねながら、その人の特性に合った支援を心掛け、信頼関係の醸成に努めて参りました。
・その途中経過の中で、先般、親御さんから標記のお言葉をいただきました。ご本人様には数多くの支援者がいる中で、ご縁をいただき当事業所を利用していただくことになった。しかも、うちは、知的にも発達にも特化した事業所ではなく、単なる居場所としての精神作業所。まったく、知識・経験がないことは恥ずべきことかも知れませんが、障害をもった一人の人間が、日中活動場所として満足して通ってくれることは、利用者さんにとっての満足感がそこにあるからと自負しております。
・いっぽう、発達障害の矯正ありきで、次のステップに進むことは本人の幸せに繋がるでしょうか。親御さんの安心感に繋がるでしょうか。そうなるのであれば、私にはまったく異存はございません。ですが、親御さんから「私の考えは間違っていることに気づかされました」というお言葉をいたたいたこと。ご本人からも「ここに通うのは楽しい」と言っていただいていることを踏まえれば、矯正プログラム適用に向けた取り組みが、本人と親御さんの幸せに繋がるとは考えにくいのではないかとお伝え致しました。
・この内容は、次に繋がります。どうぞ、当事業所にご興味をいただいた方はHPをご覧ください。
https://tsudukipinel.fc2.page/