・「堂々と明かせる仕事に就くこと」「現職に頼み事をしないこと」「現職よりも稼ぐこと」だそうだ。悪田権三が言った言葉ではない。昔、ある警察OBが教えてくれた。その方は警察を退職後、警備会社に再就職し、その後、警備会社を起業して、現在、神奈川県内某所で警察OBを雇用しながら、かなりの業績を挙げている。以下、「三箇条」の中身を解説する。
・退職した後、偶然も含め、昔、お世話になった人に再会することがある。当然に「今、何をやっているの」という話しになる。ところが、それをはっきりと言えない人がいるのだそうだ。具体的にどのような人を示すのかは分からない。職業に貴賤はないのだから、例えば単純労務に就いている人を卑下して言っているのではないと思われる。だとすれば「いかがわしい職」に就いている人を言うのか。このあたりも含め、悪田には今一つピンと来ない。
・倫理規程により、警部以上の警察官は、在職中に就活出来ない。しかし、警視以上の警察官は、再就職先をすべて警務課があっせんしているから全く心配はない。一応、希望を聞いてくれるし、中には、求職する側から「〇〇デンキ以外でお願いします」と答えた人も多かったそうだ。ブラック企業に関する情報は、それこそ「悪事、千里を走る」がごとく伝達速度が速い。
・ちなみに、神奈川県では、公募制度というものを採用しているらしく、正直、悪田も中身はよく理解していないが、倫理規定をなし崩しにするための、合法的なフリーエージェント制度がまかり通っているようだ。
・たぶん、これがあれば、優良企業や外郭団体に堂々と天下り出来る仕組みになっているだろうから、その詳細をお知りになりたい方は、警務課人事担当にお問合せ願いたい。お問合せいただいた結果を悪田にお教えいただければ、向学のため、広く周知を図って参る所存だ。
・頼み事の話は、昔からよくある。遠慮なく無理難題をお願いしてくるのもいれば、現職の時はあんなに横柄だった先輩が、退職した途端に掌を返し、腰を低く接してくることもある。
・しかし、人間の本質は変わらないから、現職の時に悪人だった人が退職した途端に善人になるとは考えにくい。
・それでも、相談内容が事件に関する対応依頼であれば、それは、警察の本来業務だから、頼み事とは言わない。が、中には驚くほどの無茶な頼み事をしてくるOBがいる。ここでは容量の大きな話になってしまうので、具体的な話は別な機会とする。ただ、このあたりは人間性が出るのが実情だ。
・何だかんだと言っても、警察OBに高い給料を払い、それなりの待遇で迎え入れる企業側にすれば、顔が利く人が欲しい。「まぁ、顔を立ててくれよ」という常套句があるとおり、まさに顔だ。中身が警察にとって深刻ではないにても、頼み事をするOB側にとっては、あくまでも、現職に、一旦、持ち帰って検討して欲しい事項だ。
・決して無理を通してくれということではないし、無理を頼まれれば、かえって人間関係を悪くする。しかし、強烈な戯言を口にするOBがいるのも事実だ。悪田も現職当時、職務強要罪で身柄をとってやりたいと思ったくらいのOBに接し、呆れたことがある。
・そういうOBに限って、現職当時は「〇〇部長」「〇〇学校長」だったりするもので、警察機関紙新年号の一面に写真が掲載されるくらいの権威はどこに消え失せたか、人は環境に左右されるもの、まさに「人は変化の中で生きている」だと思う。
・三つ目が、実は、一番、よく理解できない。OBになってどうやって現職以上に稼ぐのか。普通で考えればそれはあり得ないのではないかと考えるが、やはり、それは世の中うまく出来ている。しかし、その話もやはり、やや、容量が大きな話なので、今後の機会にする。
・定年であれ、勧奨であれ、警察官を退職する時に取得させてくれる資格としては「警備員指導教育責任者」くらいだろう。悪田は当時、興味がなかったので固辞したが、後で考えたら失敗だった。この資格は普通に取ろうとしてもなかなか取得出来ないが、何故か、警察官を退職する年配者は勉強熱心だから、皆、晴れ晴れと価値ある資格を、いとも簡単に取得され、第二、第三、第四の人生に生かしている。
・少なくとも、悪田が働くマンション管理会社の管理員には、ざっくりと「元銀行員」「元検察事務官」「元大手電機メーカー技師」「元病院事務責任者」などなど、社会経験豊富なスタッフが大勢いる。そんな爺ちゃん婆ちゃん達から、悪田は、毎日のように叱咤激励をいただいているが、不思議と元警察官はいない。
・警察官は激務だから、退職した後になってまで、汗と埃にまみれた仕事には就きたくはないのだろうとも思えるが、そこに警察の大先輩がいないから、悪田ものびのびと働けているのも事実だ。