いわゆる「仕手株」のチャートのような乱高下する動きになってしまうことがある。
性分であろうか、忙しいのは苦にならない。普段から半端ない業務量を抱えながら、さらに追い討ちをかけられるので、だいたいの理不尽やら不条理には耐えられると自負している。
結局は会社に泊り込みになってしまった先日、いつものようにマズラーで腹ごしらえ、自分の仕事に集中していた。23時過ぎに、上司からある書類を見て欲しいと頼まれた。見ると中身は画餅である。違う言い方をすると「上申書」「オレのやったこと」「非行の動機と反省書」形式のひな型(案)であった。
あるトラブルがあり、当事者に反省を促す意味で書かせるそうだが、果たしてこちらが期待したとおりの反省を示してくれるのか甚だ疑問だそうである。
詳細には触れないが、そもそも確信犯が意図した計画で進めた一連の犯行を、まだ認めていないのに処分を検討するようなものに見えたので、僭越ながら進言させていただいた。
悪田権三の主義は「上申書に反省文は不要」である。事実行為や動機など、犯罪の一部しか見えていない段階での薄っぺらい反省文など有害記載だと考えている。
悪い奴は後で供述を変える。その時、こうだと認めた内容を後で翻す。翻した理由を取調べを担当した捜査官のせいにする。
裁判官の前では誰しもいい子になる。
公判では極悪非道な輩が、あたかも善良な被害者のであるかのように振る舞う。人は皆、自分が助かりたいために必死だ。
悪田は過去に幾多もこのような経験を積み重ねた結果、①綺麗事を口にする奴、②ポン中、③ヤクザ、④詐欺師、⑤色仕掛で寄ってくる異性、⑥その他は信用しないように心がけている。
上司に対し、誠に僭越ながら「上申書に反省文は必要ありませんから、抜き差しならない内容にして下さい」「こういう輩は後で供述を翻しますから、そうなることを想定して作るべきです」と進言した。文案として、一つ二つお送りして差し上げた。
たいそう喜んでいただけた。
夜が明け、段々と台風の嵐が強くなってきた。
深夜早朝のコンビニ店長に栄養ドリンクを差し入れして、会社に戻り仕事を続けた。
全力で取り組めたおかげで、だいぶ進み、もう少しで土日の準備が完成しそうなタイミングで、機械式駐車場地下ピット排水ポンプが故障中のマンションで満水警報が出た。
ポンプの手配がなかなか間に合わずに危惧していたところでの発報、天気予報ではあと4時間程度で雨はあがるとのことだが、外は土砂降りだ。
上司と打ち合わせた結果、車が水没するのを避けるため、排水ポンプを持参で水抜き作業に出動することになった。
出発するまで、あと30分待って欲しいとお願いした。
土日の集会準備を終わらせ、必要な資料を車に積み込み、直帰したい考えを伝えた。
その時、別のマンション管理員から些細な内容の問い合わせがあった。些細な内容だから「はい、分かりました、そうしてください」で済む話なのに、ネチネチネチネチと不満を口にして、なかなか電話を切らせてくれない。
こちらは一刻を争う事態で出掛ける準備をしているのに、その空気を読もうとしない。シビレを切らし「申し訳ないんですが、緊急で出なければならない用事があるので、そのようにしてもらえませんか」と伝えるも、なおも食い下がる。
「だからそうして下さい」と、つい口調が乱暴になる。しかも、こちらは一睡もしておらず、体力は既に限界を超えている。
土砂降りの雨の中、車を走らせ目的地を急いだ。
祈るような気持ちで、パレットを上げたところ、車は無事だった。
下段の車を移動させておいて正解だった。
3人の社員で泥まみれになりながら、水抜き作業を終えたところで雨があがった。