・マンションの管理組合で定期開催される理事会を、最近のコロナ禍で密を避けたいという趣旨で、オンライン会議によって行われることが多くなった。
・悪田の担当するマンションにおいても、既に2回ほど開催した。最初は慣れない機器の操作に「接続出来なかったら」「音が出なかったら」「途中で切れたら」などと、失敗ばかりを想定し、不安だらけだったが、どこかのマンションの理事役員さんから「案ずるより産むが易すしですよ」とおっしゃっていただいた。
・実際に使ってみると、とても便利だ。普段、対面式で会議をやっていると、どうしても目線というか、目力というものが気になることがある。議案によっては、威圧感を感じるお客様もいるのではないか。ある議案が可決承認された後で、やはり、そうすべきではなかったということはよくあること。この場合、管理会社側で強く勧めた内容だと、必ず後で「あの時こうすべきではなかった」と蒸し返えされる。あるマンションでは、何年も前の決定承認実施事項が、今になって蒸し返されることもよくある。
・必ずしも、管理会社が無理に押して決めたことではなかったとしても、注意すべきものとして、例えば、お金がかかる議案、一部の利用者にとって不利益を被る、意外と使い勝手が良くない、思ったほど効果がないといった場合には、そういうリスクがあることを、実施前の議事録に必ず残しておくべきだと悪田は考える。
・さて、オンライン会議に関してだ。大まかなメリットとデメリットを記すと、まずメリットとして、前記のとおりいわゆる「目力」「威圧感」が、若干、緩和されると思う。対面式では広くお客様を俯瞰するように努めているが、オンラインだと常に視線の中にお客さんが入るので、このあたりの気遣いが不要で楽だ。それと、早口にならずに済む。悪田は比較的、早口だと指摘を受ける。オンラインの場合、どうしても音響がハウリングしてしまい、ワンテンポ遅れて音声が伝わるようなことが起こるので、特に意識してゆっくり目に話すように心がけないと、参加する人がついていきにくいという弊害が起こる。
・デメリットとしては、結局は物件に複数回行かなければならなくなる。対面式であれば、当日の会議に間に合うように議案書を作成すれば良いが、オンライン開催の場合、最低限、前日には届けたいものだ。このあたりの準備に余念なく、事前に郵送で配布することが出来れば問題はない。しかし、まだまだ未熟なフロントマンである悪田は、普段からけっこうタイトなスケジュールに追われていて、このギリギリ前日までにというのが、けっこうしんどかったりする。見積りがギリギリにならないと揃わないこともある。工事の発注手配を取りまとめている部署も、けっこうなタイトスケジュールに追われている中で、フロントから「いついつが理事会なのでそれまでにお願いします」と常に追いまくられている。
・議案書を作るのに、これがどうしても間に合わないと、当日に配布とか、最悪、画面上に見積りを見せてなどという急場を凌ぐ行動になってしまう。オンライン開催の場合、このあたりを想定した事前準備をしっかりと行う必要性を痛感した。
・PC機器を使えない理事役員さんのために、今回、現地に赴いた。狭いながらも管理員室のあるマンションで、密にならない程度の距離を確保し、ご参加いただいた。実際に実施してみると、参加された理事役員さんの評判も上々だった。今期、なかなか都合がつかず、参加いただけなかった理事役員さんも、今回、初参加をいただいた。やはり、電話やメールだけのやりとりだと、どうしても無機質なものになってしまうが、お互いに顔が見える環境の中で集会が開催される意義は大きいと感じた。
・一通りの議事進行が終了した後「全体を通じて、あるいはこれ以外にも、何かありませんか」と質問した後、女性の理事役員さんからこんな要望が寄せられた。
・「エントランスの前の植栽が枯れてしまって、土がむき出しになっていて見た目に良くないので何とかなりませんか」「マンションの前を通られる人や、マンションの住人にとっては、エントランスや植栽はマンションの顔です」「このあたりの見栄えが悪いと評価が下がってしまうのではないかと思います」「どなたか有志で植栽を植えてくれる人がいたら購入費用は組合で出すので募集してみてはいかがですか」
・これは、悪田も目からウロコだった。さすが女性ならではの視点だ。早速、集会終了後、有志の理事役員で見てみようということになり、エントランス前に集結した。
・平素から気にしてはいなかったが、確かにひどい。まったく手入れされた形跡がなく、植栽は、いびつに伸びたまま。雑草は生えたまま、そもそも陽当たりの悪い場所では、土がむき出しになったままである。
・「どのようにしましょうかね」とご意見を伺うと「ほら、あそこのパチンコ屋の隣のマンションで植えている植栽、ああいうのを植えればいいんですよ」とのこと。何でも「緑と赤の葉が生い茂る街路樹(品種は分からない)」で日照不足にも強い品種だそうだ。早速、帰りがけに覗いてみたら、確かに整然と生い茂っていて、見た目にもどこか癒される。
・つくずく、女性の目のつけどころは違うなぁと感銘を受けた。
・このマンションの管理委託契約には、植栽管理が入っていないから、有志を募った結果、誰もやらないとなると、悪田がやることになるのは明白だ。そもそも管理員の業務にも含まれていないので、花壇に雑草が生えたままになっていることも仕方のないことだ。「こころの通う管理」とは、こういうお客様のニーズに応えるべき部分を、先回りしてやることだそうだ。管理員には無理強い出来ないから、フロントがやれという意味だ。そこは就業規則に書かれておらず、原理原則にも示されていない部分だが、このような話が出てしまった以上、やらざるを得ないことは覚悟している。
・正直、悪田も暇ではないから、やりたいかと問われればやりたくはない。しかし、お客様商売の最前面、あるいは接地面に立っているのは、フロントマンなので、このあたりの迅速かつ柔軟な判断の適否が、会社の評価にもフロントマンのやる気評価にも繋がってくるだろう。休みも随分とたまってきた。秋が深まり、この夏を振り返ると、夏季休暇は結局、3日間取れただろうか。しかも、すべて代休消化だ。それでも、消化し切れない代休が、毎週毎週積みあがっていくのが不思議。しかも、不思議なことに休みを完全消化しているフロントマンもいる。などなど愚痴をこぼしてみたが、結局、人は人、悪田は悪田、すべてはお客様の満足のためにやってしかるべき仕事だ。
・しかし「顧客満足度は、従業員満足度の先にあるもの」という悪田の持論にブレはない。