・この年になり恥ずかしいが、悪田権三はよくミスをする。いわゆる凡ミスが多く、我ながら、ややそそっかしいと自己分析している。
・新人警察官だった当時は、ミスをすると、よく、先輩・上司から怒られたもので、昔は、鉄拳制裁が飛んでくるのも珍しくなかった。さすがに、この時代、しかも民間会社でパワハラなんてないだろうと思っていたとおり、弊社ではパワハラはない。「礼節をもって仲間を敬います」とのスローガンを掲げているだけあって、むやみやたらに気合いを入れられることも、もちろん鉄拳が飛んでくることもないのは安心だ。
・しかし、お客の中には、そういう配慮など、一切、無用だとばかりの振る舞いをする人は少なくない。管理会社を下働きとしか見ていない態度の客も少なくない。だいたい、不満があると二言目には「金を払っているんだからやらせなきゃダメだ」と言う。立場的に、相手は客だから、お金を払っているという分だけ言わせてあげれば良いのだが、中には、自分勝手な理不尽を強要して来ることもある。
・数え上げると枚挙にいとまがないくらいの要求も常であるが、この話を書いていると、また話が宇宙の彼方に飛んで行ってしまうので、今日は我慢する。
・担当するマンションの理事長から電話があり「外の水栓の水が出しっぱなしになっている」との電話をもらった。理事長は出先にいたところ、家族からの電話を受けて悪田に問い合わせてきた。すぐに管理員さんに連絡を取るものの、今日は水を出していないとのこと。するとマンション内で昨日から、ある居室の外壁で防水工事をやっていることを思い出した。職人が水を使った後、閉め忘れて帰ってしまった可能性が高い。
・水栓には無断使用されないよう、取り外し可能な専用のコマがついていて、普段は管理員室で保管しているとのことであった。悪田はすぐに工事の責任者に連絡を取り手配した。
・人はこういう凡ミスをしてしまう。得てして、複数の作業を同時に進めている時や、注意力を欠いたなれが生じてしまった際に起こりえる。人間、ミスをすることは誰にでも起こりえるから仕方ないが、起こった後の対処が何よりも肝心だ。二カ月後に水道使用量が大きく跳ね上がっていた時の対処方法を、ふと脳裏をよぎったが、まずは水を止めることが先決だ。
・「カネを払っているんだからしっかりやれ」と激が飛んで来そうだが「怒られることも仕事」である。