研修日誌

【これは研修生の感想文(日誌)である】

・今日、研修生のオレは、憎っくき悪田権三に半日間同行する不幸を経験した。

・悪田権三に同行させられるのはこれで四回目、親切・丁寧に指導してくれることを、これまで期待していたが、その期待は無駄であることを改めて学んだ。

・過去の同行を振り返ると、一回目は初めて赴く駅での待ち合わせにf始まった。たった五分遅れただけで、悪田から、ネチネチと説教をくらった。それを思い返すと、怒りが込み上げてしまうから、忘れるようにしているが「知らない場所で到着時間に間に合わない心配があるなら、一本、早い電車で来るべきだろう」と上から目線で言われ、朝から不愉快な気分になったことは忘れまい。

・初めての理事会というものに参加した。不慣れなんだから手取り足取りじっくり教えて欲しかった。新旧理事役員が一同に介する、いわゆる「引継理事会」で、オレはどの役員が新で、どの役員が旧かも理解できないのに、悪田が早口でどんどん展開して行くので、目が回ってしまい、気持ち悪くなり、ゲロを吐きそうになった。

・二回目は眠たかったのでよく覚えていない。車の後ろの座席で静かに寝てた。悪田が人の悪口ばかり言っているから、つまらないと思い寝てた。助手席には悪田と同年代の上司の係長が乗っていたが、悪田と係長で話に盛り上がっていたので、オレはいつの間にか寝てた。ところどころ、悪田が「この話題は研修日報に書くなよ」と言ってたので、俺は人の悪口を研修日報に書いてはいけないことを学んだ。

・帰社し、悪田から「あの関係性において、お前の座る位置は、普通、運転席か、最低でも助手席だろう、後ろの座席でふんぞり返って寝てるんじゃねぇ」と指導されたが、正直、ムカついた。

・三回目は、何と高所作業だった。約二カ月前から聞いてはいたが、研修と称して、こういう危険極まりないブラックな作業が許されていいのか。ルーフバルコニーの排水ドレン管に雑草が生えて、放置すると階下漏水の原因になるということを教わったが、そういうことは、専門業者にやらせるべきだろう。高所から落ちて怪我でもしたら、労基や、警察が捜査して事件化されるのではないのか。作業終了後、悪田からおごってもらった昼飯の居酒屋の定食は「実に安価な口止め料」だと感じた。

・そして四回目の今日、悪田は、また、俺にめんどくさいことを言った。俺も、一応、気を遣って「悪田さん私が運転しますよ」と言ったのに「人の運転は信用できねえ」と拒否しやがった。前回、俺が運転しなかったことを咎めておきながら、今日になって俺に運転させないのは、どういう了見か。

・物件に向かう車内で「マンションとは何か」と問われた。そんなこと分かるわけないだろ。俺は入ってまだ二カ月の新人だ。悪田から「勉強不足だ、持ち帰って勉強しろ、宿題だ」と言われたが、お前は一体、何様のつもりだ。

・研修生の俺にそんな暇はねぇ。俺は管理業務主任者試験に合格しろとお前よりもっと上の上司から言われているんだから、マンションの定義なんて持ち帰って勉強している暇はない。思い違いをするな、俺はうちの会社の救世主として採用された。お前みたいな警察をクビになったカスと一緒にするな。

・しかも、単なる配布物の回収だと言って俺を連れ出しておきながら、物件の若奥様に「6月にやったばかりの植栽が伸びてきた」と言われ、気持ちの悪い笑顔でヘラヘラ愛想笑いを浮かべながら「それでは抜けるところだけ抜いて参ります」などと、調子のいいことばかり言って、炎天下の中、俺を遣いやがった。

・お前は普段から「オレは心の通う管理という言葉か嫌いだ」などほざいておきながら、ちょっと美人の若奥様から、文句を言われだけで、調子をくれて、挙句に俺に雑用をいいつけやがった、そのおかげでスーツが汗だくになった。どうしてくれるんだ。

・帰社途中のコンビニで「冷たいものをご馳走してやる」と言いながら、結局、出てきたのは、定番、坊主頭の図柄「〇リ〇リ君」とPBの麦茶・・・悪田権三、お前、ケチだなぁ。

・お前から、担当物件決まったのかと聞かれ、三つほど答えてやった。それで、過去三年分の集会議事録を読み返し勉強していることを教えてやった。どうだ、オレすげぇだろ、これで担当マンションのことは全て把握出来ているぞ。

・悪田よ、あんたも、社会経験長いらしいが、警察クビになって大変だな。どんな破廉恥でそんなことになったのか、俺には分からんが、そのうち俺が出世したら、アゴで使ってやる。また、あんたも分をわきまえ精進すれば、そのうち良いことがあるかも知れないから、くれぐれも腐らないようにな。まあ頑張ってくれや。

 

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