じゃんけん必勝法

・①後で出す。しかし、これは反則だから、出すタイミングをバレないよう意図的にやや遅らせる。反射神経を鍛えると勝率アップに繋がる。

・②事前に自分が出すメニューを相手に告知する。これは心理戦となる。相手もお互いの手の内を知っていると、展開が読みやすくなる可能性もある。

・③ゴールポストを後で変更する。朝鮮人がよくやる手口だ。勝負を決した後でルールを変える。例えばじゃんけんが終わった後で、先程の結果は、今、決めたルールで反則と決したから、そちらの反則負けと判定します。

・④事前に業者間調整(談合)する。調整力に優れた番頭がいる組織は無益な戦いにスタミナを浪費することを回避しながら、バランスの良い配分を用意してくれるので、角が立たずに穏便に事が決す。

・と、ここまでじゃんけんを考えてみたが、こんなものは、所詮、子供の遊びに過ぎないから、権利・義務・名誉・財産・信頼性・親和性・人格・能力・価値観などなど、大人の都合では、一寸たりとも譲れない駆け引きがある中で、重要案件をじゃんけんのようなゲームで決めようということはまずない。あくまでもものの例えとして導入に用いた。

・神奈川県逗子市で2020年2月、マンション敷地の法面が崩落し、通行していた、当時、高校生の女性(18歳)が亡くなった事故があり、現在、係争中となっている。報道によれば、マンションの管理員が崩落事故の前日、管理会社(たぶん担当フロントマン)に報告したものの、対処がなされることなく最悪な結果に繋がったとされている。

・関連する報道では、刑事・民事での手続きが行われていることや、加害者側の管理会社は争う姿勢を示しているなどなど、当事者でなければ深く知らないことも含まれているので、悪田による、ここでのコメントは無用と判断した。

・悪田権三が言いたいのは、この事案をきっかけに、管理会社は危機感を共有すべきということだ。現実的なことを話したい。例えば、自分がこのマンションのフロントマンだった場合、崩落の前日に管理員からの報告があったことに対して、物理的に崩落事故を防ぐことが出来たか。

・出来たと答えられるフロントマンは神様だ。世の中の管理組合の理事役員さんは、リプレイスを含む管理会社の選定条件として、この事案を例に「防ぐことが出来た」と答えられる管理にすべてを任せることが出来れば安心だ。悪田権三は、正直、自信がない。はっきり言って無理だと判断せざるを得ない。

・山の上に建っている。山を抱いている。宅地造成によって作られているマンションは、それこそ山ほどあって、悪田も自分の担当物件に関しては常々、気にするようにしている。困ったことに擁壁が部分的に爆裂しているとか、建物に亀裂が入っているとか、エフロ(エフロレッセンス:セメントのアルカリ成分が白華したもの)が出ているとか、部分的に陥没しているとか、そういうマンションは珍しくない。実は物凄いリスクを抱えていることがあるが、ここでの説明は省略する。

・建物や外構に関する長期修繕計画の中で、予定となっている工事に関しても、定期的な外観目視等によって崩落の危険性が窺えるものであれば、点検報告の都度、結果を理事会に報告し、対処方法を提案する。

・そこで危険性を指摘したにもかかわらず、管理組合がその提案に耳を貸さなかったということであれば、管理会社の善管注意義務は免れるだろう。管理委託契約にもそのようにうたわれているいるだろう。しかし、実態としてそういう前兆事案を管理会社で認知した場合、多くは専門業者に現調を依頼し、判断を仰ぎ、理事会に提案し、審議のうえ対応方法を決することになる。

・一概に金額は関係ないが、緊急性・必要性・費用対効果といった部分を見られる。当然に過去の修繕履歴を聞かれることもあるので、そういう準備は欠かせない。ノーガード戦法で理事会に臨むと、そういう修繕の履歴や過去の不具合緊急対応の前例をやたら気にする理事役員さんがいることがあるので、最低限の手持ち情報は必要だ。

・ある日、悪田が、たまたま、ある物件に立ち寄った際に、管理員さんから「ちょっといいですか」と声をかけられ「塀が傾いている」との報告を受けた。現調すると確かに傾いている。よくよく聞くと、管理員が勤務するようになってから、少なくとも、6~7年前からこのような状態なのだそうだ。それを何故、今更、報告するのか。自分の責任を回避したいからか。

・報告を受けた側は、正直、困る。この種の案件において、前任者はまず逃げることしか考えない。前任者はだいたい既に担当者ではないことを大袈裟にアピールし、ギアを「バッグ」に入れ、それこそ、エビの緊急避難のような姿勢で、超素早い退避方法でいなくなる。今回もそうであった。今では、悪田の前任者は、はるか宇宙の彼方にいなくなってしまった。

・塀の傾きを現調し、専門業者と相談し、理事会に報告したうえで前期通常総会の報告事項とした。遠くない将来において修繕しなければならない案件であり、傾いた先の構造を確認すると、コンクリート塀が隣接するマンションの貯水槽と揚水ポンプに接している。

・これが何かの拍子で倒壊してしまった場合、完全に当方(管理組合)の責任だ。ライフラインの根幹をなす水が使えなくなってしまえば、その間の補償ということを考えただけでも頭が痛くなるから、なるべく早く工事を終え、危険が及ばないように対処すべきだと考えた。

・傾きの原因は分かりやすく、元々、地盤が緩いところに自重のあるコンクリートブロックを設置していることにある。それと、常に強風にさらされている地域だ。少なからず風の影響を受けにくい構造に改修することも重要だ。そこでまずは改修工事のメニューとして、自重の軽い、なるべく強風の影響を受けにくい、メッシュタイプあるいはアルミ製ルーバー式のものとしたいと考え、見積(相見積)を取得した。

・やはり、アルミのルーバー式は高い。しかも強風の影響をモロに受ける地域だから、答えは明白だ。メッシュ式のフェンスとすることが、最も費用対効果の面で優れている。しかし、総会に議案上程前の理事会において、出席理事役員から、現行のコンクリートブロックが設置された経緯の説明が、突如、報告された。マンション竣工時に隣接する駐車場の自動車の排気ガスの懸念があり、その影響が比較的少ないと考えられたコンクリートブロックでの施工を、当時、隣接するマンション管理組合から要求されたことが分かった。

・経緯が分かれば、こちらの立場を相手に説明して理解してもらうしかない。そのため、先方の理事長に掛け合って交渉したところ、先方のマンション内で合意形成を諮るので、依頼文を回覧したいとのことだった。そこで、現在の傾きに至る経緯、今後、想定される危機、予定している仕様にて施工したい理由をお便りにして送らせていただいた。そこには、自重と地盤が原因で傾きが生じ、重要なライフラインであるマンション付属設備を損壊してしまう恐れがあること。本来、アルミ製のルーバー板を設置したいが、強風の影響を受けてしまう恐れがあることから、このあたりの審議を理事会で尽くしたうえで、結論を導いたことを、当マンション管理組合書として説明させていただいた。

・ほどなく、こちらの意を汲んでいただけた。その内容で許可された。メッシュ式のフェンスでの改修案で承認するという合意内容を隣接するマンションからいただくことが出来た。

・こうして、同案で総会議案で上程することとなり、組合員に対し、臨時総会議案書を事前配布た。すると、組合員の一部から「目隠しは必要ではないか」との意見をいただいた。事前配布した議案書には、これまでの経緯と現下の不安、近隣マンションへも丁寧に説明したこと、この根回しで異論のなかったこと、さらに施工に際し、隣接マンションの土地への立ち入りも許されたことも説明した。ところがそれでも「目隠しを必要」と主張するので、やむを得ず総会の場での発言をお願いした。組合員も「それでは総会で意見を述べさせてもらう」と言ったが、その後、音信不通となった。総会にも出席されなかった。不満を述べたところで自分の意見は聞き入れられないと判断したのだろうか。

・こうして、臨時総会にて満場一致の承認を得て、議案は可決承認された。そして、改修工事に着工する日が到来し、悪田も工事を立ち合うこととなった。今、まさに、これから工事が行われようとするところ、管理員が悪田に声をかけたきた。そして「何故、目隠しフェンスにしなかったのか。今すぐこの工事を中断させて、目隠しタイプのフェンスにしなければダメだろう」と騒ぎ立てた。悪田は耳を疑った。

・これまでの経緯は、組合員だけでなく、上司を含め管理員にも、途中経過としてすべて知らせてきたつもりだったが、この管理員は、フロントマンの働きに目を向ける意識すらないことを再認識させられた。そもそも、あなたが、数年来、放置していた不安を、たまたま物件を訪れた悪田に報告したことは、単なる興味本位だったのか。だとするならば、興味本位で口にして、いたずらに悪田の危機意識を煽らなければ、このような手間のかかる難解な案件を悪田が背負う必要はなかった。しかし、結果はどうあれ、塀が傾いているという危機的な情報をフロントマンが知ってしまった以上、聞いていないと嘘をつくことは出来ない。

・しかも言い出しっぺの張本人は管理員であり、悪田はそもそも、管理員が組合員の不利益を考え、正義感から報告してくれたものと信じていたが、どうもそうではなかったことを最後の最後で知った。

・管理員は、冒頭のじゃんけんにおいて、「後だし」という反則技で悪田を煙に巻こうとした。結局、このじゃんけんという幼稚なゲームに勝ったのは、悪田ではあったが、正直、悪田にはそんな暇がない中で、誠実に案件に向き合い、責任を遂げたのだから、本音は労いの言葉があってしかるべきだと感じた。ただ、最悪の結果いういうことにならなかったことは素直に喜ぶべきだと考えた。最悪の結果になってしまった場合に、この経緯を検証され、塀の傾きを知っていたのに、何の対処も組合員への報告も怠ったということであれば、悪田は完敗、二度とフロントマンとして浮かばれなくなるだろう。そのリスクを考えれば、個人的な不満など、単なる戯言であって構わない。このように認識させられた事例であった。

・しかも、隣のマンションが自主管理のマンションであることを知ることが出来たのは、悪田にとって大きな成果だ。悪田権三は自主管理マンションを応援している。今回のきっかけは、悪田にとって又とないチャンスとなるかも知れないから、工事が完了した暁には、そのお礼をお便りにして、一軒一軒投函して回ろうと考えた。

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