・管理費等の長期滞納問題を抱えている管理組合がある。一般的に組合員どうしの人間関係が良好なマンションほど管理費等の長期滞納が多いと言われる。驚かれるかも知れないが、理由はこうだ。
・人間、誰しも安定的に高収入を得ている訳ではない。悪田権三とて警察官だった当時はコメとビールを買ったことがなかった。賄賂を貰っていた訳でなく「ふるさと納税制度」を利用して、返礼品としてコメやビールを選択していた。年収に応じて目安が示されるから、欲しいものありきで返礼品を見て注文するだけで、品物が送られてくる。納税する訳だから、当初、出費となるが、後で戻ってくるのでそれなりに満足感が得られた。
・警察官を退職した後は、無職・無収入となってしまい、その後、不動産業を開業したものの、軌道に乗る前に撤退を余儀なくされてしまった。悪田の敵だった諸氏は「ざまぁみろ」と、さぞや喜んでくれただろうが、おかげで今の自分がある。泣く泣く夢にまで見た不動産業を縮小し、その後、マンション管理会社に拾っていただき、世間に揉んでいただいたうえで、自分がドMだと気付いた。今では、運命に感謝し、日々、精進を重ねているつもりだ。
・特別な能力も取り柄もないが、何とかギリギリの生活が出来るだけの給料をいただいている。また、実質、休眠状態となっているが、㈱億山の代表取締役を務めさせていて、ここでは他人様にご迷惑をおかけするような借財はない。さらに、嬉しいことに、最近では障碍者支援団体NPO法人の理事長から、監事にならないかとのお声掛けをいただき、社会全体で支援が必要な方々のためにお役に立てる機会をいただいた。
・加えて、報酬ゼロということを謳い文句に掲げている。マンション管理コンサルにおいても、NPO役員の報酬にしても、基本的に交通費以外の報酬をいただくことを考えていない。ただ、移動時間と拘束時間の度合いに応じて、日当をいただかないと自分自身が破綻してしまうので、ケースバイケースで個別相談させていただくが、蓋を開けたら、あらびっくり「超高い」ということは絶対にないからご安心いただきたい。
・では、得体のしれない悪田権三は、何を目指しているのかという質問が寄せられるだろう。それは「本当に困っている人のお役に立てる生き方が出来ること」それだけである。不動産業をやらせていただいていた当時、同業者にその話をした時に「はぁ」みたいな怪訝な顔をされた。しかし、現職警察官だった当時も現在も悪田権三という存在は、このスタンスで一貫している。困っている人のためだけに生きる。それだけである。日本共産党も極左も朝鮮人も反社会勢力も組織に胡坐をかいた警察幹部も、悪田にとっては嫌いな存在だが、困っているという前提があれば、何とかしてあげたいと考えている。気持ちのうえで。
・前置きの長い導入に続けて本題に入る。
・管理費等の長期滞納は、一般的に三カ月以上の滞納をいう。管理費等とくくったが、ここには、管理費、専用庭使用料、バルコニー使用料、修繕積立金、町内会費、駐車場代、その他有料施設利用料やペットクラブ会費などが含まれる。いわゆる「定期金」債権と呼ばれている。区分所有法第19条、21条を根拠とした、マンション標準管理規約(単棟型)以下「規約」第25条に支払い義務が定められている。
・では、支払わないでいるとどうなるのか。管理費等の長期滞納は区分所有法第7条、8条を根拠とする規約第26条の承継人に対する行使が可能であることを前提とし、さらに区分所有法第6条と、57条から60条までを根拠とする標準規約の「共同の利益に反する行為」「義務違反者に対する措置」に繋がってくる。
・要約して実務と絡めて説明するとこうだ。
・滞納管理費等の請求は、理事会に報告したうえで、管理会社にて督促を行う。それでも払わない組合員がいる。管理委託契約の一環として三カ月間管理会社にて請求を続け、それで管理会社のおつとめは終わる。しかし、それでは終わらない。本来であれば、ここで有料施設の解約を行う。とか、滞納管理費の取り立てを法律事務所に依頼するなどの審議をしたうえで、その事務を委託するなどする。
・そこで、長期滞納者が督促に応じて支払ってくれれば一件落着となるが、実務上はそんなに簡単に解決しないことが多い。法律事務所に委託した場合、その後の交渉等の一切を委託したことになるから、途中で管理会社がクビを突っ込んでというのは反則行為になる。
・一方で、法律事務所も債権の取り立て(回収)業務を慈善事業でやっているのではないから、委任契約が成立したならば、滞納額に遅延損害金を上乗せして、さらに法律事務所の成功報酬(着手金ゼロ:成功報酬25%ポッキリというところが一般的)を上乗せして請求する。
・この時点で、ざっくり計算すると、例えば滞納管理費の合計を20万円として、規約に従い遅延損害金年15%を乗っけて23万円、そこに成功報酬25%を入れてくるので、計28万7500円となる。すなわち、対管理組合との交渉で20万円で済んでいたものが、法律事務所を入れると8万7500上乗せされてしまう。
・終わらないゲームだと言ったのは実はここからである。
・20万円ですら払えない額を、さらに8万円以上、上乗せされて喜ぶアホはいまい。どうやって上乗せ分を支払うか。分割にすると、月額どのくらいか。ということを考えるだろう。負担が重くなったのはそもそも誰のせいか。それは嫌な問題を先送りした債務者にあるという論法に繋がり、その考えは正しく多くの区分所有者からの賛同を得る。
・委任契約を交わした後、法律事務所の督促を放置しておくと、裁判所に申し出て、確定判決を貰いましょうというアナウンスが始まる。債務名義が不要なので、比較的短期間に判決が出る。判決に基づいて請求がなされる。払う人もいるし払えないと主張する人もいる。中には、さらに放置するという選択をする人もいる。
・そうすると、さらにワンランクアップして、債務名義に基づき強制競売の訴えを考える。ところが、管理費等の定期金債権は、抵当権に劣後するので、競売が行われた場合に配当が行われない、いわゆる民事執行法上の「無剰余譲渡」の場合、競売は裁判所の職権で取り消される。
・その後は、いよいよ前述のとおり、区分所有法上の「義務違反者に対する措置」に移行し、いいわゆる「59条競売」が行われる。もっとも、この59条競売も無剰余譲渡の禁止の適用を受けるので、競売の申し出が必ずしも認められるとはいえない。当然に管理費等の定期金債権は抵当債権に劣後する。よって、債権の順位としては①抵当債権、②公租公課、③管理費等債権となる。
・ただ、競売となった場合、上記②は抵当債権に満たない金額で落札されてしまうと消滅してしまうのに対し、③は新区分所有者へ承継されて請求可能なので、民法上の先取特権といった優遇措置がある。
なお、管理等のくくりにおいて、区分所有に従って、当然に不随する管理費・修繕積立金等の債権は、未払いであっても不真正連帯債務として新区分所有者に引継がれる。しかし、駐車場・駐輪場使用料といった区分所有に従わないものは、新区分所有者に引継がれないという考え方が一般的だ。これに対しても諸説あるが、フロントマンとしての悪田であった場合、全額、請求させていただく。一方、社会正義を掲げる偽善者悪田の場合、場合によっては伝家の宝刀を抜いてでも困っている人を助けてあげたいという気持ちはある。
・ゲームという呼び名は不適切かも知れないが、法的手続きを知らないで自分の殻に閉じこもると法律事務所という債権回収のプロ集団のおもちゃにされ、ゲーム感覚で弄ばれてしまう。また、管理会社のフロントマンにおいても、このあたりの手続きを知っているようで、実はよく理解出来ていない者が多い。
・なにはともあれ、一流のフロントマンとしては、管理組合の立ち位置に立った対応と債務者側に立った対応の両方の感覚を身につけることが肝心だと思う。こと、理事会は組合業務の執行機関であるので、そこにつくフロントマンの能力の違いが組合運営の公平性・中立性・親和性を左右する。